部活を終えて、服を着替えてリアカーの自転車にまたいだ。そして、いつものようにあたりを見まわす。

「あれ、また彩花帰っちまった」
いつもなら校門前で上を向いているのに。

「約束をしたのか?」
「まっさかー、してねぇけど?」
「だから居ないのだよ」
真ちゃんにバッサリとそう言われて俺はリアカーをこいだ。そのこいでいる間にも俺は彩花を探した。この時間帯ならまだ公園かどこかに居るはず。俺は確信をしていた。
まぁ、その革新の材料となるのが眼だ。これを使って彩花の居場所を探る。
ほら、やっぱりいた。

「彩花ー! 帰ろうぜ!」
大きな声で名前を呼ぶと、ビクッと肩を動かしてこちらにゆっくりと振り返った。
そしたら、お疲れ様、と笑ってくれた。俺はそれが嬉しくなって真ちゃんを置いて行きそうになったが、明日何をされるか分からないので止めておいた。
本当、こういう時ってむかむかするよなー。

「乗れよ、送る」
「え、良いよ! 私一人でも帰れるし」
「良いから乗るのだよ、委員長」
あぁー! 真ちゃんが言うセリフじゃねぇだろ! と俺は思いつつ、乗れって、と勧めた。じゃあ、と彩花は遠慮がちに乗った。
重さはあまりというか全然変わらなかった。


「そういえば、いつもは何故大谷は上を向いているのだよ」
「上? あぁ、空を見てるの」
自然に俺は上を見上げていた。そこには、いつもと変わらない空があった。暗くて、でも明るい空があった。普段と変わりのない空を見て何が楽しいのだろう。

「ふふ、和成は分かってないかな」
「なっ、分かるっつーの」
「強がらなくてもいいのに」
「強がってねぇよ」
後ろから聞こえる笑い声に俺は少しドキドキしていた。心臓がうるさい。真ちゃんは場の空気を読んでか静かだった。
ギコギコとペダルをこぐ音と、彩花の静かに笑う声しか聞こえなかった。

「あ、今度試合見に行くね。友達に誘われてさ」
ダメかな? と耳元で聞こえた。俺は、おう、来いよ。と笑ってみせた。
そしたら彩花は、良かった―、と嬉しそうに笑ってくれた。素直に俺は嬉しかった。


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