燃ゆる思ひを ※一応後編(恋ひわたるべき)
煙がフワリと宙に浮く。もわもわとした部屋の中、ベットの上でゴロゴロしながら過ごす女が一人。
「ねぇ、江戸に行くの? 京の都に行くの?」 雑誌を広げ、その女は問いかけた。
「お前はどっちが良いんだ?」 「んー。江戸!」 んじゃあ、江戸にするかと、煙管をしまいこみ男はベットの上に座った。やった、とはしゃぐ女は雑誌を何冊かベットの上に広げて、男に見せる。行きたい場所を選んでいるようだ。
「あんまり目立たねぇところにしろよ」 「はいはーい! あ、銀……なんでもない」 また子のところ行って来る―、とその部屋から出て行こうとした。
「おい、彩花。江戸に行くのは、そいつに会うためか」 ピタリと足が止まった。分かりやすい。
「そんなわけないじゃん。バカだな、晋助は」 「そうかい」 パタンと閉じる彩花の顔は、少しだけ、悲しそうだった。高杉は分かっていた。攘夷の頃、彩花が銀時に好意をよせていたことぐらい。なのに、高杉はそれを奪ったのだ。 多分、今でも彩花は銀時が好きなのだろう。この気持ち一生片方なんだと高杉思っていた。
「言えるわけねぇよな」 きっとこの思いは、ずっとしまい込んだまま。
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