意味通じてるならそれでも。
「悠一朗だ。お帰り。遅かったね」
「おぉ! 彩花ー!」
家族の居る目の前でどうどうと抱き付く田島悠一朗。だがしかし、これは日常茶飯事の出来事なので驚く人は居なかった。寂しいのやらむなしいのやら。だけど、気持ちは嬉しいの一言で埋め尽くされていた。

「てか、なんで家にいんだよ。姉貴か?」
「うん。そうだよ。あ、最近野球漬けなんでしょ?」
彩花は少しだけ背の高い彼の顔を見ながら言った。田島悠一朗は、彼女の顔を見るべく顔を少し下に向ける。土の付いた服で抱きしめられていても気にしてはいなかった。土の匂いも含めて、彼のような気がしていた。

「ほら、悠! 着替えてよ!」
彩花の後ろには料理を持った田島家の長女の姿があった。彼女は一番末っ子には甘かった。しかし、それは姉弟の中での話で、そのほかの姉弟も、祖父母も末っ子の彼には甘かった。

「あ、姉貴……」
「ほら彩花ちゃんおいで」
抱き付いた手をはらわれ、二人は離れた。彩花は先に席に座っていてとはやし立てられたため、静かに座った。隣は決まって、空いていて、着替え終わった田島悠一朗がそこに当たり前のように座る。そして、皆、それぞれ食べ始める。

「うまそう! いただきまーす」
「いただきます!」
家族は多くて、その分料理の品数も量も多かった。女性陣は凄い体力使うなぁと彩花は思いつつ、料理の手伝いをすることも少なくはなかった。彩花は末っ子の彼女だからなのか、もともと田島家が人懐っこい性格だからなのか、すぐに仲良くなったらしい。もう、家族同然で、田島家になるのは時間の問題と言う感じであった。

「あ、これ彩花が作った奴だろ!」
自信満々にいう彩花の隣の彼は嬉しそうに煮物をほおばった。「なんでわかったの?」と、恐る恐る彼女は聞いた。まずいだのなんだのと言われるかもしれないと目をつぶって、聞こうとしていた。
そうしたら田島悠一朗は、「なんか、甘いから」と笑った。美味いぞ。とも言っていた。
彩花は嬉しそうに笑っていた。何も言えずに顔を真っ赤にもしていた。

「また作ってくれよな! ゲンミツに」
「うん、ゲンミツに作るね」





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