後味悪い夏の日に

夏大。
俺は一年にして一軍入りをした。
正直、驚きが隠せなかった。
それと同時に、まだまだ先の話だが秋大では正捕手になる確率が高くなったということにも驚きが隠せなかった。


「樹くん一軍入りおめでとう!」
「あ、ありがとうございます」
一年年上の彩花先輩に祝ってもらい、凄く嬉しかった。
けれども本当に俺でいいのかと、日が経つごとに思うようになってきた。


*

今までの正捕手のキャプテンが引退してしまい、俺は正捕手になった。
嬉しいはずなのに、笑えなかった。不安の方が多いからだ。
キャプテンみたいにしっかり投手をリードできるか不安だった。


「樹君、どうしたの? こんなところで」
人目につかないところにいると、
気がつけば彩花先輩が隣に居た。
先輩はフワリと笑っていた。可愛いの一言につきる。

「あ、いや、特に……」
「嘘。正捕手の件でしょ?
キャプテンみたいにできるか―って悩んでたんでしょ?」
「……はい」
図星だった。
先輩は凄い人だと改めて実感した。

「いやね、キャプテンも同じことで悩んで暗い顔してたからもしかしたら―って思ってね」
「キャプテンも……ですか?」「うん。最初から自信満々に正捕手やる人なんてそうそう居ないよ。
最初は不安だよ。でもじきに慣れるんだよ」
樹君もきっとそうだよ、と最後に先輩はいってその場から離れた。

冷たい風が頬を撫でる。
パラリとめくれたスコアブック。
俺はそれを持って、彩花先輩の言葉に押されたかのように、俺は鳴さんの元へ駆けていた。
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