(先輩の)恋愛相談室
「はぁ? 女がドキドキするシチュエーションだぁ!?」
「しーっ! 純さん、うるさいっすよ!
これ、秘密なんっすから!」
「いや、ゾノ。お前も結構声デカかったぜ?
でけぇ声の秘密だな」
純さんは俺をからかいながらもアドバイスをくれた。
俺は聴いただけで、顔を紅くしてしまった。
「んだよ、好きなんだろ?
ほら、これ貸してやるから」
どこから出したのか、紙袋いっぱいの少女漫画をさしだされた。
俺は戸惑いつつも受け取る。
「んじゃーな、頑張れよー」
「は、はい!」
*
「頑張れって言われても……」
正直、あいつとはあんまりしゃべったことないし。
むしろあいつみたいな奴は御幸とかが好きなんじゃ……。
「あ、前園君ー!」
「!! お、おう。宮本」
ヤベェ、今あんまり会いたくない奴に会っちまったー!
純さんの声が脳に木霊してる。
「えへへ、あ、それなに?」
宮本は俺の腕の中にある紙袋を指さす。
「な、何でもない」
「えぇー? あ、もしかしてラブレターとか?」
「んなわけあるか。そういうのは御幸のとことかに行くもんやろ」
「そう? ふふ、隙アリー」
「ちょ、おい!」
紙袋を引っ張られたと同時に、俺は、宮本の方に倒れてしまった。
俺の体重乗っかったら、つぶれる!
「あ、ご、ゴメン。前園……く、ん」
「え、お、おぉ。
全然えぇ……よ」
今の体制は、純さんから教えてもらった『床ドン』というものになっている。
「……前園君? 大丈夫?
顔真っ赤」
「お、お前もや」
俺は罪悪感で胸が押しつぶされそうになった。
はよどかんと。
「……待って、どかなくて良いよ」
手首に少し暖かいモノを感じた。
「ど、どかないで……って何言ってるんだろう。
ゴメンね、もうすぐ部活始まっちゃうよね。ココ、人通り少ない廊下で良かったね。
変な噂たたないうちに」
「どういうことや」
俺は聞き逃すことができなかった。
「……ま、前園君はさ野球に三年間を捧げるためにここに来たってわかってるよ。
けど、好きになっちゃったの」
「俺もや。俺も好きなんや」
「嘘つかなくて良いよ」
「嘘やない! あの紙袋の中に、純さんから借りた漫画が入ってるんや。
それは全部全部宮本の為なんや」
これが俺の初めての告白だと思うと、もう少し良い告白が無かったのかと考えた。
彼女はとびきりの笑顔で俺にもう一回告白をした。
(返事は?)
(良いに決まっとる)