頭を撫でるのは場合によりけり

「ヒャハハ! 御幸、ラブレター多いな。お前はラブレターとか出した事あんのか?」
「うっせ。あるよ」
マジか! 嘘だ。といつも通り倉持と会話していた。
……俺にだって、ちゃんと居たんだ。高校に入ってから会う回数は少なくなったけれども、俺にだって好きな異性は居た。年齢は俺よりも上で、その人はもう結婚してしまった。もう少し、早く俺が産まれていればなんて思う事もあった。




「あ、一也君!」
練習試合の後と試合の後、いつも声をかけてくれた。俺の親よりもはるかに多く試合を見に来てくれた人物だ。この人は、隣の家の人でよく遊んでもらっていた。

「今日も勝ったんだね! おめでとう」
そう言って俺の頭を撫でる。子ども扱いするな、と蹴りをいれたいが、そんなことできない。好きな奴にそんな事できるわけがない。だから、えへへ、と子供のような笑顔を見せた。頭を撫でるという行為は、俺にとって一番苦痛に近いものだった。

「って、事で、夕食私と一緒になったんだけど良い?」
ヤベ、聞いてなかった。たぶん、いや絶対、父さんが仕事で忙しいからという理由なのだろう。でも、どんな理由でも一緒に食べれるのは嬉しかった。俺は、うん、と頷く。良かったー、とホッとした表情を見せてきた。当然、俺の顔は真っ赤だ。あぁ、父さんも父さんだ。あの人は鈍感じゃないから知ってるはずなのに……、意地悪な人だ。でも、これは父さんが与えてくれたチャンスなのであろう。とか今さらながら思っている。

「あ、そうだ、一也君、今からいう事はまだ誰にも言ってないから誰にも言っちゃだめだよ?」
いや、父さんが与えてくれたチャンスじゃ無いや。

「私ね、結婚することになったんだ」
嬉しそうに、顔を赤らめて、そう言ったんだ。俺は頭の中が真っ白になった。この瞬間、俺の初恋は終わったんだ。もう、何もしたくなくなった。……もう、何もかも嫌になった。
俺は、未だに名前の知らないあの人に恋をしている。毎日毎日、告白する女の子にあの人も入っていればな……なんていう事を考えている毎日だった。

あの人を超えられる人はいないと俺は確信していた。




空を飛ぶ5つの方法 様から。
年下の相手は難しいの3, でした。
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