「失礼しま、す……」
恐る恐る部室に入れば、哲が練習メニューを考えている最中であった。
「……あ、彩花」
哲はそう言うと、固まってしまった。
それもそうだよね。昨日あんなことあったんだし……。
「あのね、哲! 私……。
哲の事、すきだよ」
「……? 知ってるが」
哲は何を言っているんだ状態である。
え? 知ってるの?
「それもそうだろう。
なにせ付き合っているんだから」
「いや、それは仮で……」
「でも、好きなのだろう?」
「う、うん」
何だこれ。
哲はこの事に関して気を落としているわけじゃないんだ。
良かった――。
「でも、なんで今日元気なかったの?
皆気にしてたよ?」
「それはだな……。
最近、皆に嫌われているようなんだ」
「え、皆?」
「あぁ。廊下を歩くたんびにこちらを見て、ヒソヒソと
陰口をたたかれているんだ。
特に女子にな。あれは怖い」
「……それ、陰口じゃないと思うよ」
それは、きっと、哲がカッコいいからだよ!
なんて友人に言ったら、怒らせるに違いない。
しかたないじゃないか。カッコいいんだから。
「そうか? なら良かった。
しかし、他にもあるんだ」
ホッとした表情もつかの間、すぐに先ほどの顔に戻ってしまった。
次は何だ? 私はそう思いながら、椅子に座る。
「……一年に嫌われているようなんだ」
「へ?」
一年生? え、あの一年生?
「いっつも喋ってるじゃん」
「沢村とかとはだな。
だが、他の一年にしゃべりかけると、そそくさと逃げてしまうんだ。
キャプテンとは嫌われる立場と聞くが、そうなのだろうか。
もしかしたら、俺が一年に嫌われるような行動をとったからこうなってしまったのだろうか」
「……哲、ちょっとタイム」
私はそう言うと、哲の返事を聞く前に部屋から出て言った。