「哲也君、どういう事? あれ」
私は帰り道、聞いた。
哲は困っていた。
「俺も好きだからです。
だから、付き合ってほしいです」
哲は言った。
「哲也君、ありがとう。
けれど、私もあの後考えたの」
「何をですか?」
「彼女が居たら邪魔じゃないかって。
だから、哲也君は私からして仮彼氏。
私は哲也君からして仮彼女ってどう?」
私は言った。
やっぱり、三年間を野球にささげるためにここに来たんだもん。
私のせいでその三年間を駄目にしてほしくない。
「……という事は、どういう事なんですか?」
「私は哲也君の彼女。
でも、私は哲也君の彼女でもあり先輩でもあるって事。
これだったら、哲也君も野球に集中できるでしょ?」
「ですが……」
「私は、嬉しかった!
哲也君と同じ気持ちで」
その時の私は、良く分からなかったけれど、仮でも良いって思った。
仮でもいいから、哲の彼女になりたいと思っていた。
「ありがとうございます」
「これから宜しくね、哲」
「宜しくな、彩花」
初めて名前を呼ばれて、敬語なし。
突然だったから、私は頭がショートしそうになったのを今でも覚えている。
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