奢ってもらうのは少し嫌だったので、自分のはきちんと支払おうと思ったが、
彩花さんが俺を席に座らせて支払いに行ってしまった。
なんだか、情けない気持ちになった。

「有り難うございます」
俺は、素直に受け取った。俺が食べたのはコーンタイプのチョコレートチップだ。
隣で食べる彩花さんはキャラメルリボンというとてもかわいらしいものを食べていた。
周りの人たちは俺達の事をどう思っているのだろうか。親戚? 友人? それとも、カレカノ? 気になってしょうがない。

「美味しい?」
「はい」
俺は頷く。そしたら彩花さんは嬉しそうに笑ってくれたんだ。そんな笑顔が未だにはなれない。その笑顔を浮かべるだけで頬が赤くなるのが分かる。
その後はよく覚えていない。
あの顔を思い出しただけでドキドキしていたのだ。
隣に居る彩花さんはそんな俺に気づくはずもなく色々な話をしていた。
刻々と過ぎていく時間。そんな時間が短く感じるのは俺だけなのだろうか。彩花さんも短く感じているのだろうか。
頭の中はそれで埋め尽くされ、心臓の鼓動が早くなる。
あぁ、こいつがか、と初めて知らされた。良く女子たちがなる病。俺にもとうとうかかってしまったようだ。
でも、少し、嬉しかったりする。

「さてと、帰りますか」
「そうですね、送ります」
「えっ、良いよー」
「大丈夫ですから」
ちょっとだけ男前なところを見せたかっただけだった。
歳の差を忘れさせてしまうぐらい、俺は彩花さんにおぼれていた。

「別に気遣わなくていいのに」
「いえ、俺がしたいことなんで」
「紳士だなー」
鳴に見習ってもらいたいよ、と笑っていた。鳴の文字が出てくるとは思わなかった。
少しだけ、胸が痛んだというのは秘密で。



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