自転車のギコギコとこぐ音、それだけが私の耳に入っていく。
そして、自然的に私の腕が一也君のお腹あたりに巻き付かれていた。
それは一也君も私も自然だと思っていた。

「あのー、一也君?」
「なんッスか?」
「さっきの彼は……」
「ハッハッハ! 分かってますって、でも、なんで一緒だったんスか?」
顔は見えない。でも、声的に笑っていると思う。そんな彼の声に私は、素直に答えた。
ただ一言、合コンでね、と言った。勘違いされるかもしれないと思い、乗り気では無かったんだけどね、と笑って言った。
あれ、なんでこんなにドキドキしているのだろうか。
私は、その気持ちが全く理解できず頭がポーっとしていた。

「あの人、大丈夫かな」
だから、思ったことを普通に発したのだと思う。この言葉にはいたって深い意味はない。ただ、思ったことを口にだしたまでだ。

「あの人って……さっきの奴?」
「え、あぁ、うん」
「気になってる?」
「いや、ただ、思っただけ」
私がそう言えば、ふーんと、また興味の無さそうに言う。自分から聞いておいてなんなんだ。
まぁ、あの雰囲気はちょっと嫌だったから感謝はしているけど。

「あ、ココっすよね」
「え、あ、家……」
気が付けば、自分の家の前だった。
ありがとう、と言えば良いっす、と言われた。
そういえば、普通に自転車の後ろに乗ってしまったがこれは違法だ。
今度からは気を付けます。

「今日はゴメンね、疲れてるのに」
「いや、別に、俺がしたかったことなんで」
気にしないで良いっすよ? と笑ってくれた。うわ、絶対モテるでしょ、一也君。
私と一也君は家の前で別れた。

中学生相手にドキドキしたのは秘密で。


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