ほら、これ、と彼の手には午前中から探し回っていたノートが握られていた。私は、どこでこれを!? と問う。彼は、落ちてた、の一点張りだ。
いつも通りのゴクゴク普通の帰り道。この道を一緒に歩けるのは、後何日なのだろうと考えるだけで胸が苦しくなる。そんなネガティブ思考で歩いていると、急に彼は立ち止まり、上を向いた。何を思ってかは知らないが、私はとりあえず、一也の言葉を待った。

「なぁ、彩花は俺から離れていかないよな?」
「当たり前のことを聞かないでよ」
「どっちなんだよ」
一也はいつにも増して真剣な顔つきで私に問いかけた。私は、離れないつもりだけど? と笑って言った。きっと彼も、私と同じくらい、いや、それ以上にネガティブ思考で、大切な物が無くなってしまうのではないかと恐れているのだ。

「一也、私、一也が思ってる以上に一也が好き。一也が告白されても、バレンタインデーにチョコ貰っても、私は、一也が好きなことには変わりないから」
なーんてね、と場を盛り上げようとしたがそれは逆効果というか何と言うか、取り敢えず、彼に抱き締められた。
俺も、好き、彩花が好きだ、と子供のように好きを連発してきた。私はそのたんびに、照れを隠しながらうん、うん、と頷いた。

「俺、彩花を幸せにする自信がある。だから、待ってて、俺がプロに行くまで」
「プロに行くつもりなの?」
「んー、親父の会社に勤めるのもなぁ」
まだまだ先のことを彼は、一人でうんうんと考えていた。私は、今日は帰ろうよ、と意見を出した。おう、とすぐに返答が返ってきた。




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