玄関に立つ紅牙と由依
向かいには由依の家族がいる
『行ってきます』
「っ、連絡するのよ。必ず一年に一回は顔を見せてね」
由依に母親が抱き着く
それに続いて父親も、兄も、全員が由依を抱きしめた
解放された頃には全員顔が涙でぐしゃぐしゃになっていた
「大丈夫ですよ、皆さん。アイツは由依を幸せにして…いや、幸せにさせますから」
幸せにしなかったら俺が責任持ってぶっ飛ばしますから。
そう言った紅牙に由依の兄は「いや、そこは「俺が責任持って幸せにしますから」だろ」とツッコんだ
それで空気は幾分か柔らかくなった
「会いたくなったら会えますし、ね。大丈夫ですよ。変な奴からは俺が守ります。由依の幸せは俺と、俺の三翼が必ず守ります。だから、だから……俺が言えることじゃないけど、笑顔で由依を送り出してやってくれませんか」
由依の家族はハッとした表情になった
そして全員が柔らかく微笑む
由依は一つ息を吸い、何かを決意したような目をゆるりと細めた
『いってきます』
「「「いってらっしゃい」」」
ドアがゆっくりと閉まる
ゆっくりと言っても短い時間だ
でもそれがスローモーションのように思えた
扉が閉まる寸前
由依は一筋の涙を零しながらも微笑んだ
それは幸せそうで、とても悲しそうで
しかしそれでいて、この世のモノとは思えないほど……美しかった