ある少女は街をぶらぶらと歩いていた
その日はいつもつるんでる部活で仲の良い同級生と後輩の三人で出かける予定だったのに、寝坊だの弟が熱出しただので結局ドタキャンされたのだった
『可哀相な自分……あいつらには今度何か奢らせよう。そうしよう』
そう恨めしそうに呟き、少女は待ち合わせの場所から離れた
そして仕方なく自分の目的である買い物をするために、ゆっくりと歩きだしたのだった
『今日は朝から夜だった
どんより曇った日本晴れ
昔々のついさっき
昨日生まれたばあさんが
95、6の孫連れて
黒い白馬に跨がられ
前へ前へとバックした』
そう口ずさみながら歩く少女の姿は良くも悪くもとても目立っていた
銀色の髪の毛に赤と黒のメッシュを入れ、片耳にはピアス
服装はシックなパンツスタイルなのに、恐ろしく整った顔と派手な頭髪のせいで、あらゆる人が振り返る
それでも、彼女は慣れているのか、気にせずにふらふらと歩いていた
『今日は朝から夜だった
生まれたばかりのばあさんが
水のない池に落っこちた
手のない人が助け出し
足のない人が駆けつける
南の南の北極で
正義の味方の悪漢が
黒い白馬にまたがって
「前へ前へとバックする」』
彼女が口づさんでいた詩(うた)に突然重なった知らない声
驚いた少女は勢いよく声のしたほうを振り返った
目に飛び込んできたのは、少女と同じ
―――――――銀色