門の前で出会った少年
彼が千里の息子だったらしい
彼も私が先祖だとは思ってもいなかったのだろう…まぁ当然か
私達は間抜け面で再開することとなった
『あー……雪村由依です。君の先祖に当たるらしいよ……よろしく、ね…?』
「風間千尋(チヒロ)です…これから側近を務めさせて頂きます。由依様のことは父上から既に聞いております。精一杯由依様にお仕え致しますので、よろしくお願いします」
……あれ?何だろ、この違和感
詳しくは言えないんだけど
門の前でも感じたんだよね
今はそれが一層強くなってる
……あっ…分かった
『敬ってないのに敬語を使う必要はあるの?』
「なっ!?」
『気づいてないとでも?馬鹿にしないでほしいな。……それに、普通突然現れた私が先祖だとか信じないよね。門の前で丁寧に対応したのは外面を良くするため…でしょ』
「…分かってたのかよ」
『うん。でも、そっちのが似合うんじゃない?』
「…ふざけんな」
『ふざけてないよ』
こちらを睨んでくる千尋君は父親とは大違いだ
千里は物腰が柔らかかったけど、千尋君はトゲトゲしてる
いきなり出てきた怪しい女なんかに仕えるなんざ、真っ平御免だ!! ってとこかな
ま、怪しい女ってのは否定できないけどさ
…さて、後ろ盾もできたし
情緒不安定になったときに縋る人も見つけたし
やることはもう無いかな
『じゃ、千尋君バイバイ。私は世話になってる家に行くよ』
「は?待てよ。送る」
『必要無いよ。千里には私から適当に言っとくから』
「ちげぇよ。夜道を女一人で歩くとか危ねぇじゃん」
『私、鬼だよ?』
「鬼だろうが鬼じゃなかろうが危ねぇの。準備してくるから少し待ってろ」
千尋君は私の言い分も却下して部屋を出ていった
なんだ、千里と千尋君、やっぱり親子じゃん
二人とも頑固だ