及川と岩泉と女主

王子様の生まれ代わり 及川
お姫様の生まれ代わり ヒロイン
継母の生まれ代わり 岩ちゃん


「さぁ、俺だけのお姫様」

「お、及川くん……」

「大丈夫。これを一口食べるだけだから。そうすれば、幸せな未来が待ってるんだヨ」


迫る及川の手にはいかにもなリンゴ。岩泉から何度も何度も救われ、耳にタコができる程に「及川には気を付けろ」と言われてきたからには、おいそれとリンゴに口を付けるわけにはいかない。だが及川はバレーボール部の主将なだけあって身体は鍛えられている。及川の胸を押し返そうにも、嬉しそうにその手を取られるに終わってしまった。

これは、まずい……。

どうにか逃げなければならない。視線を走らせると、向こうから救世主がやって来るのが見えた。


「岩泉くん!!」


それに及川は振り返り、顔を引きつらせる。次の瞬間、岩泉の脚が目の前を通過し、及川は吹き飛んだ。


「逃げろ!!!」

「ありがとう!岩泉くん」


走り出した私の耳には、もう二人の会話は聞こえなかった。



「ギャー!!!何すんの岩ちゃん!!!!!」
「うるせぇ俺の娘に手を出すんじゃねぇクソ川ボゲェ!!!」
「あのこは俺だけのお姫様なの!!!邪魔しないでよお義母様」
「てめぇが母とか呼ぶんじゃねぇ!!!!!」





生まれ代わってもう一度ヒロインちゃん(お姫様生まれ代わり)とイチャラブしようと思ったのにヒロインちゃんは前世の記憶ないし惚れてくれないしギリィ…!!!
これは魔術でもって惚れさせるしかない。何故なら俺は王子で彼女は姫だから!!って感じでヒロインちゃんを自分に惚れさせようと試行錯誤しながら魔法(というより呪い)を掛けまくる及川

それに対し、やっと継母魔女なんて面倒なポジションから解放されたのに可愛い可愛い(前世の)娘であるヒロインちゃんになんか毒牙が迫ってる!!!!ってなって、及川の暴走を止めるために呪い解除に奔走する岩ちゃん。物理的な訴えも辞さない。ヒロインちゃんには王子とか姫とかの関係なしに幸せになってもらいたい。その割に、アイツはダメだとか言う。ヒロインちゃんの従兄弟で全幅の信頼を寄せられている。恋愛面においては及川から敵認定されてる。それが余計にヒロインちゃんから敬遠されるとは気付かない残念及川。


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