欠陥ヒロイン狂騒曲 | ナノ


01



「丹波愛美です」

「山田早苗よ」


皆の前で自己紹介する新マネージャーを見ながら、麗の頭の中は英単語が飛び交っていた。正直マネージャーが入ろうが入らなかろうがどうでもよかった。仕事は今でも難しいわけでは無かったから。

部活前の準備をして、スポーツドリンクの粉を溶かしてジャグにぶち込み、道具の整備をし、顧問からの雑用を引き受け、時間を管理する。それくらいのものだ。人数も各学年に約二人でも回っていたし、そもそも中学生の部活にマネージャーが居ることから稀なのだから。
マネージャーの仕事を教えるまでもない。麗は先輩が残していった『やること一覧』を引っ張り出し、二人に押し付けた。「やること、そんだけだから。自分で出来るよね。じゃ」そう言って顧問の元まで駆けていく。指示を顧問に仰ぎ、それを新人に伝えて自分も仕事を始めた。


「先生ー、精くーん、切原がサボってまーす!」

「先輩!待って!!すんませんっ!!」



*** ***



「ありがとうございました」

「「「ありがとうございました!!」」」

「はい、解散」


幸村の一言やら、柳の今日見つけた改善点の羅列やら、顧問の連絡で部活は終わる。コートはローテーションで掃除だ。今日は一年生だからもう帰っても良いだろう。ただでさえテニス部は練習が長い。故に残って練習する人はあまり居ない。しかもテニス部の練習目標は《限られた時間で最大の成長を目指す》だから、残って練習したら逆に笑われる…らしい。……という部活ではあるが、やっぱり皆練習を続ける。テニスクラブに入ってる人はテニスクラブで。入ってない人はストテニや市民公園で。努力を見せないなら良いらしい。よく分からん。

いつもなら家に直帰だが、今日は先生に質問しに行くつもりの麗は、部室から出てきた幸村に声を掛けた。


「精くん、私今日は先生に質問してから帰るね」

「あぁ…先生も良いけど柳に聞いたら?今暇みたいだし」

「……む」

「敵に教わるのは悔しい、と思っている確率97%」

「100%ですぅー。柳に教えてもらうくらいなら氷皇に教えてもらうからいいもん!!」


麗は幸村の後ろからぬっと現れた柳にあからさまに顔をしかめ、頬を膨らませた。最終的にはやはりと言うべきか、彼女の親友に頼ることにしたらしい。二人にベーッと舌を出して逃げてしまった。
それに二人はポカンとするも、すぐに笑みを浮かべた。同い年ではあるが、周りが大人びていたり癖が強かったり。正直面倒な奴らの集まりでもあるテニス部で、麗はちょっとした癒しだったりする。



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