欠陥ヒロイン狂騒曲 | ナノ


00.5



幸村精市 15歳 男
3月5日産まれの魚座 A型
私立立海大附属中学校 3年C組 21番
男子硬式テニス部部長

そんな彼の目の前には、頭を抱える少女がいた。「英語分かんない…!」と泣きつかれたのはいつからだったか。1年からずっとな気がする。


「麗、中間乗り越えれる確証がないと合宿連れて行けないんだけど」

「分かってる…」


ゴールデンウイークに予定されているテニス部の合宿。中間考査はゴールデンウイーク明けにあるわけで。ただ分からないだけならそこまで問題無かったのだが、麗は少々特殊だった。

幸村の幼なじみとして育った麗は、幸村にとても懐いていた。幸村も幸村で、自分を慕ってくれる麗を甘やかしていた。そんな二人がバラバラになる、その話が出たのは小学五年生のこと。
幸村はテニスプレーヤーとして既に才能を開花させていた。すると幸村の両親も幸村も、テニスの強い学校に通う方向に自然と向かった。そして幸村は立海大付属中学校に進学する、と勉強を始めたのだ。
しかし家庭が比較的裕福であった幸村と違い、麗の家は一般家庭。正直大学の事を考えると、高校はまだ良いとして、中学はせめて公立に通わせたかった。そのことを娘に話してみるも、「やだやだ!精くんと一緒がいいの!!」の一点張り。仕方なく夫婦は娘に約束をした。

「中学校のテストで、常に10位以内に入ること」

それが出来なければ受験はさせられない、と。二人は奨学制度を狙っていたのだ。
麗は当然その話に乗った。必死に勉強して合格。今までのテストはきっちり10位以内をキープしている。

しかし毎回立ちはだかる壁があった。それは外国語である。
「第二外国語!?なにそれキモ!!意味分かんない!!外国語は英語一択でしょ」とどちらも英語にした麗だが、苦手なのには変わりなかった。


「おーい、幸村くーん!!」


ぐぬぬぬ…と麗が唸っていると、丸井が教室までやって来た。幸村に用事があったようで近寄ってきた丸井は、幸村の傍に来てやっと麗に気付いたらしい。机にかじりつく麗に疑問符を浮かべ、手元のテキストを確認するとあからさまに嫌そうな顔をした。


「なにやってんだよ佐久間」

「中間考査の勉強だよ。麗は10位以内に入らないと部活禁止だからね」

「は!?」

「あれ?知らなかった?」

「知らなかったぜ…」


今まで知らずにいたから、勉強の邪魔も何回かした覚えがある。その度に反応が返ってきたから面白がっていたが…


「丸井、今までの所業を詫びろ」


斜め下からの視線が痛い。ついでに言葉遣いも悪い。そりゃそうだよな。今までは知らなかったから許されていたものの、知ってしまったからには謝らないと…


「わりぃ…」

「うん、いーよ」


そう返事をし、またテキストに目を落とした麗に丸井はきょとんとするも、こういう奴だったと思い返し、苦笑いをうかべた。


「そういえば丸井は俺に何の用事だった?」

「あ、あぁ…。あのな、転校生が来たんだよ!!」


それはいつもの日常で、いつもの一日で。それは非日常な日常の始まりだった。



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