欠陥ヒロイン狂騒曲 | ナノ


17



うるさい。うるさい。うるさい、なぁ。


「×××!!××××××!××××××××!!××!×××!!××××××、××××××××!××××××××××××××××××××××××××!!!!××××!佐久間××」

「あー、なんて言ってんの?わっかんないや」

「×××!!××」

「きたないなぁ。うわ、ちょっとやめてよ。とりあえずひとのせいにするのはやめな…って、うわ」

「×××!!!!!!」

「……せっかく優しくしてやってるのに。怒られるから止めろって」



*** ***



一昨日、切原に教えてもらった。改めて調べたところ、やはり山田さんはストーキングをしていたらしい。山田さんが住んでいた部屋はそのまま放置されていて、資料が残っていたんだとか。でも、それを通報しようとしたところ、警察に繋がらないし、大家は山田さなんて知らないと言い出すしで、気味が悪くなって退散したそうだ。それを聞いた私も気味が悪くなって早退した。家に帰ってすぐはピンピンしてたからお母さんに怒られたけど、午後から本気で寝込んで心配された。

そんで、熱が出た私は昨日今日と休んでいるのである。突然の熱にインフルかとも思ったけど、違うっぽい。
つまり何かというと、暇。超暇。ほとんど治ってるなら宿題やっときなさいと言われてしぶしぶやった。終わった。暇。

暇だと氷皇にメールを送りまくれば、夢小説でも読んどけ、と返信が来た。はて、夢小説とは何だろうか。

のそのそ起きてリビングへ向かう。テレビを見るお母さんを横目に私はパソコンを付けた。調べれば分かるもんね。あ、本屋に行かなきゃ行けなかったら嫌だな。本は図書館で借りる派だから。図書館にあるかな?


「お母さん、パソコンやるね」

「病み上がりなんだから時間決めてやりなさいよ」

「はーい」


そんな話をしているうちに、お父さんこだわりの最新パソコンくんは起動した。自分のやつを選べば、お気に入りの絵がデスクトップに映された。これは私が産まれたときにおじいちゃんおばあちゃんに貰った絵らしい。それを頼み込んでスキャン。題名は何だったかな……


「で?何時まで?」


思考はそこで途切れた。お母さんの言葉に時計を見上げる。あー、うーん…。パソコンやるの久しぶりだし。


「1時間やるー」

「分かった」


ちなみに携帯は先程お母さんに取り上げられた。携帯は触らないと約束したにも関わらず氷皇とメールをしているのが見つかったからだ。たぶんこれからは家じゃあお母さんに取り上げられるな。気分が沈む。

えーと、それより夢小説、だっけ。取り合えず、○ーぐる先生で検索してみよう。



*** ***



「氷皇!」

「あ、もう体調は?」

「うん、大丈夫」


とりあえず、と氷皇は今日の放課後に約束を取りつけた。勉強を教えて欲しいと頼まれたら断れない。そもそも麗からのお願いを断るはずもないのだが。


「あ、夢小説?面白かったよー」

「何読んだの?」

「バスケの王子様!逆ハーってやつだったよ」


楽しかった、面白かった。とニコニコする麗に氷皇も笑った。ここまで無邪気に麗が笑うのは久しぶりに思えた。しかし麗も、笑う氷皇を見て喜んでいた。氷皇が笑うの久しぶりに見た!という言葉に氷皇はキョトンとする。気付かぬ内に考え込むことも多かった。だからだろうか。自分をしっかり見てくれていた麗に、氷皇は彼女の頭を掻き撫でることで顔を隠した。たぶん、自分は情けない顔をしている。


「のんびりやろうな」


そう、こんなに詰め込まなくても良かったのだ。自分たちのペースでやれば良い。大事なその時までは勝手にやらせておけば良い。



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