欠陥ヒロイン狂騒曲 | ナノ


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テニス部の顧問に呼び出された。勉強のために部活を辞めたのに順位が落ちたから。こっちだって落ちたくて落ちたんじゃないのに。理不尽。本題は、部活に戻って欲しいってことだった。マネージャーはゆうちゃんと山田さんが中心になっている。私る出来たんだから問題ないだろうと思っていたのに、部活が上手く回らないらしい。


「頼む」

「私が戻ってどうこうなるような状態だとは思えないんですけど」


レギュラーが山田さんに惚れ込んで練習しないなんてそんな馬鹿な。皆はどちらかと言えば山田さんを敬遠していたはずなのに。精くんなんて、「なんであの子の入部許可したんだろ」とまで言ってたのに。
だから、そんな皆が惚れ込んだなら、彼女はそれほど素晴らしい人で。彼女をテニスより優先してしまうのなら、私がどうこう出来るレベルじゃない。だって彼らは寝るまも惜しんでテニスに打ち込む人たちだったから。


「とにかく、私は戻りません。次のテストで巻き返すんですから」


その意思は日に日に強くなっている。私より上に居た本人を見たときから。



*** ***



「あ、麗ちゃん!!」

「おはよ、マリンちゃん」


坂口真鈴(サカグチ マリン)。それが私の努力を越えた一人。最近声を掛けてきた。狙いは何となく分かってる。精くんだ。だって私、彼女に暴言を吐かれたことがあるもの。もう覚えてないみたいだけど。どこかで私が精くんの幼なじみと知って、取り入る為に声を掛けたに決まってる。
彼女は男と女で態度をあからさまに変える人で、あまり好かれてはいない。友達には何で一緒に居るのかとまで聞かれた。そんなの決まってるでしょ。いつか彼女が私を笑ったみたいに、今度は私が彼女を笑ってやるんだ。
精くんに紹介なんかしない。仲良くもしない。勝手にこの子が騒いでるだけで、友達なんて思ってない。


「楽しみだね」

「え?何がぁ?」

「テニス部の今度の試合」

「うんっ!」


ニコニコと嬉しそうに顔を歪ませる彼女。それを横目で見ながら、私は嘲笑った。ねぇ、誰が男子テニス部って言った?
男子テニス部で試合があっても、今の状態で見せたら、余計に部活をぐちゃぐちゃ引っ掻き回すに決まってる。そんな人に見せるわけないじゃない。




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