09
そんなわけで私は帰宅部へと華麗なる転身をしたのだが、立ちはだかる敵がいた。テストである。
「うそ…」
部活を辞めて出来た暇な時間は勉強に費やしたから、今回は問題の割に結構良い点数を取れたと思う。なのに、なんで。
1位は柳だった。2位は山田さん。3位は精くん。4から8まで知らない女子で、9位が仁王。10位が柳生。その下からは、今まで上位を占めていた名前が連なっている。
「佐久間さん!!」
「井上君…」
「なんだよ、これ!」
「分かんないよ!!」
「可笑しすぎるだろ、こんな…」
「麗!!」
「氷皇!!」
「あ、井上も居たのか。二人ともここから離れよう」
「え、でも」
「いいから!」
いつもテストで競争していた井上君。勉強出来るし性格も中々素敵で友達も多いフツメン君だ。
彼がらしくもなく私に掴み掛かってきた。そりゃそうだ。だって、上位8位は満点からマイナス10点以内なんだから。5教科5科目のテストで満点マイナス10点。つまり各教科最低98点は必要で、間違いは1問まで。しかも小問のみ。
柳は…まぁ、仕方ないか。スパコンだもんな。でも可笑しいでしょ。今回はそれなりに難しかった。だから私もギリ450を越えれなかった。私は17位だった。皆もあまり出来ていなかったのに。
考えれば考える程に分からなくなる。いつの間にか私達3人は図書室に来ていた。
「何だよ猪崎。俺まで連れて来るなんて」
「お前ら凄い目立ってたからな。井上は落ち着いたら帰って良いぞ。今回の結果が可笑しいのは確かだ。同立4位が5人なんて普通じゃない」
井上君はちらちらこっちを気にしながら出ていった。頭が冷えたのだろう。
私はそんな井上君を見ながら諦めていた。どこかで仕方ないと思っていた。逃げた私が成功するはずないんだって。
頑張ったんだけど…なぁ。
「麗、お前は頑張ったよ。点数見たけど、お前はよくやった」
「うん」
それでも優しい言葉は嬉しいものだ。私は氷皇に撫でられながら目を閉じた。優しい言葉は染み込む様に、気持ちを上向きにしていく。次、頑張ってみようかな。次こそ勝てるかもしれない。
そこまで考えて気付いた。私、テストの順位に結構プライドがあったのかもしれない。10位以内という約束があったから頑張ってた。勿論それは間違っていない。それでも誇れることだった。私を支える一つだった。
全部無くしちゃったんだな、私。部活を辞めた。テスト順位も落ちた。部活仲間との交流は当然無くなって。前と変わらずにあるのは私自身と、
「氷皇」
「ん?」
なんで氷皇は私の傍に居るんだろう。多分、氷皇と私は友達じゃない。私達の関係はあやふやで、でも確かなもので、何よりも強い繋がりだと思っている。
氷皇、氷皇氷皇。私の理解者で、いつも味方で居てくれて、いつも傍に居てくれる。全てを無くしたと思っても、氷皇はその全てに数えていなかった。隣に居てくれるのが当然で、必然で。
あれ、いつからそんな風に思うようになったんだろう。
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