欠陥ヒロイン狂騒曲 | ナノ


08



「失礼しました」


部活を辞めた。理由は受験に集中したいから。そう言えば顧問は「仕方ないな」と退部を認めた。呆気ない、終わり。
明日からは朝練に行かなくて良い。今日からは部活に行かなくて良い。これからは自分で決めなきゃ。精くんが、とかじゃなくて。

帰って何をしよう。突然時間を与えられても、反って困るな。いや、突然じゃないか。とりあえず勉強しようかな。


「麗」

「あ、氷皇」

「帰るのか?」

「うん」

「一緒に帰ろう」

「うん。下駄箱で少し待ってて」

「走って転ぶなよ?」

「分かってる」


氷皇、部活辞めたのか聞かなかったな。反対してたのに。
まぁ、良いか。氷皇の考えることは難しいから私には分からないのだ。分かるのは丸井くらい。精くんは言わずもがな。柳はスパコンだし、ジャッカルはハーフだし、真田は時代錯誤だし、仁王は宇宙人だし、柳生は真面目ちゃんだから結局分かんなあ。切原はおバカすぎて分からないというか接点無いし。ぶっちゃけ他人の思考回路も気持ちも分かるはずないんだけど。


「お待たせー」

「おー」


氷皇の向こうにテニス部の皆が見えた。外周かな、嫌なタイミングで出ちゃったな。無意識に顔を顰ていたらしい。氷皇に眉間を摩られた。びっくりした。


「あいつらが行くまで、少し、待とうか」

「良いの?」

「良くなかったら提案しないよ」

「そっか」


まぶしい、な。つい昨日まで私もまぶしかったのかな。キラキラしてたのかな。大変だったけど、嫌じゃなかった。

結局、私は逃げたんだ。分からないことから。理由の分からない恐怖から。気付いてたけど、気付かない振りをしてた。それで良いと自分に言い聞かせて、最後には考えるのを放棄した。自立を理由にして、正当化しようとして。
後悔してるわけじゃない。でも。少し、手放したのは失敗だったかな。なんて思う。

ちょっとした、矛盾。


「行ったな」

「うん」


それでも、戻ろうとは思えないくらいに、私は怖かった。自分を守りたかった。

バイバイ、テニス部。



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