欠陥ヒロイン狂騒曲 | ナノ


07



最終日前日。事故があった。
何故か、謎の恐怖心が消え去っていた私は真面目に仕事をしていたわけだ。勿論皆に謝ってある。
そして柳に練習試合についての先生からの伝言を伝えていると、悲鳴とガラスの割れる音。皆その場で動きを止めた。


「先生に言ってくる!!」


ゆうがそう言って駆け出すと、やっと皆動き出す。何があったのか分からないが、これでは練習にならないからと幸村が集合の声を上げた。


「なんでこんなことに…」


仁王の呟きが聞こえた。全くである。



*** ***



「――― 練習試合は無しにしてくるように頼んだ。今日は大人しくしているように」


顧問の言葉に数人が不平を零した。合宿の成果を発揮出来る最高の場をマネージャーに邪魔されたのだ、不平も零したくなるだろう。
あ、こりゃどっちか辞めるかな。麗はそう思った。自分も辞めて、もう一人辞めて、残るのは二人。なんだ、問題ないや。言い出し難い雰囲気だけど大丈夫だよね。


「全く、何なんだろうなー」

「さぁ、ガラスの割れた音しか聞こえなかったから……あ、ありがとう」

「気にすんな。そういえばさっき救急車来たらしいぜ」

「げ、そんなに酷いケガなのかよ」


やることもなくて膝を抱えて座っていると、丸井とジャッカルが寄ってきた。ジャッカルが渡してくれたマグカップにはホットミルクが入っていた。ありがたく受けとって口を付ける。…レギュラーで1番内面がカッコイイのってジャッカルだよな。


「そういえばさ。二人って丹波さんのこと好きなの?」


一昨日の光景を思い出して聞いてみると、二人は顔を真っ赤にすることもなく、きょとりとしていた。それからそれぞれに首を捻って考えだす。うんうん唸る二人に声を掛けても、ちょっと待ってと言われるだけ。仕方ない。待つしかないようだ。


「好き…なのか?アイツが傍に居る時は多分好きなんだけど…」

「今は別に普通だからな…」

「そーなんだよ。あ、でもヒロシは多分丹波のこと好きだよなぁ」

「結局どうなのさ。意味分かんないよ」

「傍に居ると、好きにならなきゃって思うんじゃよ」

「それだ!!」


ジャッカルと丸井に聞いたはずなのに、答えたのは仁王だった。仁王の答えにスッキリしたのか、二人は頷きあっている。


「好きに、ならなきゃ…か。ヘンなの」

「確かにそうじゃの。でも、それ以外に言いようがない。近くに居るときはヘンだとも思わん」

「……知ってる」


丹波さんに近づくといつも何かを感じた。否応なしに彼女に好感を抱いた。それがおかしいなんて思わなかった。多分それの恋愛バージョンなんだろう。

事故は起こるし、丹波さんへの感情もよく分かんないし。あの二人はいろんなモノを持ってくる。そんなものはノーサンキューだ。全くもって面倒である。

私には、もう、関係無くなるわけなんだけども。

窓の向こうは雨が降っていた。



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