欠陥ヒロイン狂騒曲 | ナノ


06



3日目。麗はあからさまにレギュラーと新しいマネージャーを避け始めた。

幸村がいつも通りに話し掛けても。サボっている赤也と目が合っても。丸井がちょっかいをかけても。柳が仕事を頼んでも。柳生が心配して声をかけても。ジャッカルが仕事を手伝うと言っても。仁王までもが心配しても。
目を逸らす、俯く、無言、引き攣った笑顔、片言の言葉、握り締めた手、震える体。今までとは違う、対極にあると言えるだろう反応しか返さなかった。
1番酷かったのは真田で、視界に入っただけで逃げる。流石の真田もショックを受けたようだ。


「麗大丈夫?」

「だいじょうぶ…?」

「疑問形で返さないでよ。今日はもう休みな」

「でも」

「はっきり言うと、邪魔なの。今日は休んで、明日頑張りなさい」


ほら、と肩を押されてコートから出された。さっさと幸村に報告されてしまったために戻ることは出来なさそうである。

仕方なくベンチから練習風景を見ることにした。勉強は決まった時間以外やりたくない。眠くなったらここで寝れば良い。ばっちり。
昨日見た歪みは今日は見えなかった。なのに何故か身体が受け付けない。1番困惑しているのは、実は麗だった。いくら考えても答えは出ない。レギュラーだっていつもと変わらない。おかしいのは自分だけ。


「何なんだろ」

「何が?」


隣に座った氷皇は、欠伸をした。

自分の悩みを打ち明けるのは簡単だし、楽になる。でもいっつも氷皇に頼るのも気が引ける。今だって、無理言って合宿にまで来てもらってる。本当は私が合宿休めば良いだけなのに何やってんだろ。新しいマネージャーも入ったし。辞めようかな。入学したては精くん追い掛けてばっかで。自分で決めたことなんて滅多になかった。今じゃ精くんの代わりに氷皇。そろそろ自立しないとダメだよな。

ぐるぐるぐるぐる。頭の中に後ろ向きな考えが溢れ出る。


「私、部活辞めようかな……」

「は?」

「皆に迷惑掛けてるな、って思ってさ。そろそろ自分で考えるようにならなきゃいけないし」

「お前が辞めたら…!」

「辞めたら?誰も困らないよ。仕事は滞らない」

「違う、皆困るんだよ。お前は部活を続けろ」

「…氷皇?」

「辞めるな。お前は続けた方が良いに決まってる。大丈夫。何かあったら俺が何とかするから」

「だから、それじゃダメなんだよ」


氷皇が口を開いた。そして、口を閉じて、また開いて。結局何も言わなかった。

意味分かんない。氷皇も、私も、丹波さんも、山田さんも、レギュラーも。



← →

[TOP]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -