欠陥ヒロイン狂騒曲 | ナノ


05


勉強の後の食事は格段に美味い。そう言いながら夕食を掻き込む赤也と丸井。丹波はその目の前で苦笑いしながら食事をしている。

麗は氷皇を誘ったものの断られ、マネージャーが集まっているところへ転がり込み、氷皇は友人の下へ行った。


「すごいね丹波さん」

「ハーレムね」


それに比べて、とゆうちゃん(もう一人の三年マネージャー)は山田さんを見た。いつも優しくて、でもサバサバしてるお姉さんだ。彼氏が他校に居るんだとか。

麗がゆうを見つめていると、後輩が同じテーブルにやって来た。皿は既に半分程になっている。


「あれ?どったの?」

「山田先輩が…」


確か後輩ちゃん達が座っていたのはレギュラーに近い場所だったはず。と見れば、そこには山田が座り、レギュラーに話し掛けていた。
麗は何も思わなかったのだが、ゆうは顔を盛大に顰めていた。


「何アイツ。男には媚び売るんだ」

「ゆうちゃん落ち着きなよ」

「落ち着いてる。でも許せないでしょう?あたし達にはあんな態度とっておいて。どうせレギュラーに近づこうって魂胆なのよ」


グサッ
ゆうのフォークがサラダに突き刺さった。



*** ***



「あれ」


風呂上がり。麗がぺたぺたと歩いていて見つけたのは、三年の男子の部屋に入る丹波だった。男女不純交遊…。ぽつりと呟いた言葉は誰にも拾われなかったが、それと同時に口の端が釣り上がる。むくむくと膨らむ好奇心に、麗は抗わないことにした。

記念すべき、初の張り込みである。

少し待つだけじゃ出てこないだろうと予測し、暇つぶし道具を取りに踵を返したそのとき。部屋から丹波とレギュラーが出てきた。すかさず柱に張り付いて様子を窺う。どうやら丹波は大人気なようだ。


「やだブン太。止めてよくすぐったい」
「なーに言ってんだよぃ愛美。このこの」
「ブンちゃん止めんしゃい」
「いい加減に止めんか!!」
「何真田、嫉妬?」
「なっ、違う!!」
「ふふ、弦一郎かわいい」


うん、どんな茶番だ。正直真田が可愛いなんていかれてると思う。
そしてぶっちゃけると、なんかあの空間がキモチワルイ。歪んでどろどろしてて色が捩曲がってる。あんなの、初めて見た。

うげぇ、と麗が思っていると、丹波を囲む集団のさらに向こうから、山田がやって来た。それにあれ、と思う。山田の周りもおかしかった。
次の瞬間には走り出していた。口を抑えてひたすら走る。そうしなければ叫びだしそうだった。足音が大きくて、彼らに麗が見ていたことがバレるとか、そんなことはちっとも考えなかった。

なにあれなにあれなにあれなにあれなにあれなにあれなにあれなにあれなにあれ。
初めて見た、初めて感じた。涙が止まらなかった。なんで自分が泣いてるのか見当もつかない。それでも自分が助けを求めているのは確かだった。


「氷皇…!」





たすけて

   、たすけて。


早くしない と  呑まれ てしま う。



なに が?   だれ が?

  なに  を?       だれ を?


あ  れ    …?





「……わかん、ない」


麗はただ目から水を零しながら、じっと立ちすくんだ。


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