演者の暴走



※男主



「そりゃあ出来ない相談だな承太郎」


 鈴子はスルリと承太郎の頬を撫でた。頬に付いていた傷は承太郎の肌から消える。
 男のわりに細くて華奢な手が離れる。鈴子はコンプレックスでもあると話していたが、承太郎は彼の手が好きだった。優しい手なのだ。男同士で手に触れることは少ないが、励ますように背中を叩くかれの手に、たまに承太郎は堪らなく泣きたくなる。
 承太郎が咄嗟に掴むと、彼はしょうがないというように笑ってその手を外した。


「なぁDIO。お前は何回目だ?」

「ほぅ?貴様もか」

「やっぱり。承太郎達に優しくない世界だと思ったよ。相変わらず俺のことは覚えてないみたいだけど。まぁ好都合かな」


 承太郎からは鈴子の背中でDIOは見えない。しかしDIOが鈴子に興味を持ったことはハッキリと分かった。
 彼は不思議な友人だった。承太郎がスタンドを悪霊だと思っていた頃、自ら「俺も似たようなもん憑いてるんだ」と言ってきた。いや、それよりも前から。彼は一匹狼の承太郎の懐にスルリと入ってきた。それが当然かの様に。承太郎もいつしか彼が隣に居るのが普通になっていた。
 しかしこれは何だ。背中を這い上がるものは、確かな恐怖だった。
 彼は承太郎より前からスタンドと共にあった。使い方も戦い方も承太郎より複雑で、戦闘中も冷静に動ける優れた男だ。仲間の中でも承太郎と共に進んで戦っていた。
 鈴子は強者なはずなのに。


「俺はいつもお前の最期を見れないんだ。本当、嫌になるよな」


 鈴子の後ろにスタンドが現れる。何時もより彼が殺気立っているのが分かった。


「何回も何回も。生きてるうちのたった数ヵ月だっていうのに。濃すぎて俺に影響を与えてくる。この旅が始まるまでの十数年が息苦しくて堪らないんだよ」


 鈴子のスタンドがバチバチと音を立てる。電気を操るスタンド。それでどうやってDIOと戦うのかは分からない。
 負け戦はやらない主義だと言っていたら、だから大丈夫なはずだ。承太郎は自分に言い聞かせた。


「さぁDIO。お前相手ってのは気に食わないけど。俺の人生の一番をやるよ」

「ハン!このDIOに貴様が勝てるとでも!!」

「負け戦はしないって知ってるだろ!!」


 駆け出す両者。
 鈴子の背後にもう1つ影が現れた。それが彼の隠し持っていた二つ目のスタンドなのだが、それは承太郎には関係なかった。


 「さよならだ承太郎」


 承太郎の瞼の裏に景色が駆け巡る。
 
  「お前が…笑って生きれる、なら」
  「死ぬ……のが…役目、だからさぁ」
  「泣くなって……また会える…」
  「は、は……五月蝿くて…眠…れや、しねぇ……よ」

 時が止まる。
 時が戻る。
 雷光が走る。
 自然の摂理に抗った戦いは町を破壊しながら、止まることはない。


「俺さ、分かるん…だよね。今回が、最後だって」


 DIOの攻撃を弾いて距離を取った鈴子は、ポツポツと話し始めた。
 至るところから流れる血に地面が少しずつ染まる。承太郎の瞳が揺れる。
 しかし鈴子は毅然とDIOを見つめて言った。


「だから、抗ったよ。俺のもう1つのスタンドで。俺の仲間は死なせない」


 お前はどうなんだ!承太郎は叫びたかった。だが承太郎も思い出した。理解した。
 胸が張り裂けそうな思いなんてするとは思っていなかった。

 何度も何度も繰り返した。最初は旅の間だけの仲間だったのに、少しずつ鈴子は承太郎の傍に居る時間を増やしていった。承太郎に気付いて欲しかったのだろうか、それは分からない。
 楽しかった思い出は繰り返した分多かった。それも辛い。だが何より辛かったのは、鈴子が役目だからと自分の未来を諦めたこと。そしてそれを覆せない自分の弱さだった。


「お前の未来は、俺が居る限りぶっ潰してやる!!」

「今までの雑魚を退けたとて、特に問題もない!!貴様は無様に死に、このDIOはジョースターの血統を葬り去る!!!」


 彼の赤が散る頃、自分は彼に誇れるように立ち上がれるのだろうか。


―――――
 男主。sssでも良かったけど長くなったのであまり出番のない名前変換をねじ込んだ。

 何回も繰り返す主人公。記憶全部ある。承太郎の為に、となんとか正気を保つ。ちなみにスタンドは自立型で意思疏通可能だからスタンドのお陰で正気なのかもしれない。
もう1つのスタンドは「時を戻す」スタンド。自分の寿命を使って時間を戻す。これで皆生き返らせた。自分は死ぬって分かってるから躊躇い無し。怪我にも使っちゃう。
 DIOも繰り返すけど、主人公はハエみたいな存在で覚えてない。

 承太郎は主人公死ぬ前提で考えてるけど、主人公が死ぬか生き残るかはご自由に。今までは気付けても助けられなかったけど、今回は……?
でも生き残っても寿命使って生き返らせてるから早死にする。


いらない主人公設定(最後)
・身長180p
・細身。分かりにくいだけで筋肉はある。どう頑張っても丸太にならない
・黒髪黒目。髪の毛を色ピンで留めちゃう系男子。ポンポン付きのゴムで前髪上げたりする。ピアスは右に1つ左に2つで計3つ。学ランの下にパーカー
・承太郎とは小学校からの付き合い



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