Oh my baby!!



こんにちは こんばんは おはよう さよなら はじめまして

どうもどうも、神様、の娘です。
今回は夢見る喧しい乙女とやらの、これまた高慢ちきで高飛車な呼び出しに、何故か応じなければならなくなってしまいました。
それも私がお父様の可愛がっていた生き物を少しばかり間違えて、他の種族と掛け合わせてしまったからなのだけど。あれもあれで可愛いと思うんだけどな……。お父様のお気には召さなかったらしく、お父様は激おこで、私はペナルティでパシリなうって訳です。ん?随分俗世に慣れてるって?まぁ、いろいろあったんですよ。

で?何だったっけ?あ、そうそう。その乙女さんは、自分が死んだのは神様の手違いだとか何だとかで、その詫びに異世界で生活させろとのことらしい。んー、ぶっちゃけた話、手が滑って予定者以外を死なせちゃうこととか、気紛れで死なせちゃうこととか、よくあるんだけどね。でも態々1個体の為に詫びなんて入れないよ。運が悪かったんだって。それも、神様の下で生きてるんだから受け入れてほしいよねまったく。いつもなら無視して閻魔さんに引き渡すんだけど、今回は私へのお仕置きが目的なので、聞いてやります。閻魔さんに説明しに行ったら、頭を撫でられて飴ちゃんを貰った。優しい。イケメン。嫁になりたい。私チョロい。

で、話を纏めると、乙女さんは図々しくも私が初めて創り上げ愛でている世界に行きたいらしい。世界というのは所謂箱庭で、大体が創った神様の好みに依っている。だから大好きで大好きで仕方なくて目に入れても痛くない世界に、好みでも何でもない物を入れることに嫌悪感を抱かない筈もなく。このお仕置きは効果絶大だと思いながら、彼女の理想に沿った場所へ送り出したのだった。



*** ***



さて、喧し乙女を世界に入れたわけですが、追い出したらダメとは言われてない私はちゃっかり世界に入って暮らしている。気分はミニチュアのお人形さんだ。


「鈴子ちゃん」

「なぁに?徹くん」


喧し乙女の目的である、私のお気に入りの隣で微笑めば、どこからか鋭い視線が飛んでくる。そんな生活をだいぶ長い間――と言っても人間的時間感覚だけど――過ごしている。乙女さんが彼に出会ってからだから、6年目、だろうか。ちょちょいっと時間を巻き戻して私はさもこの世界の住人のように振る舞っているのだ。そして幼稚園の頃に彼と、彼の幼馴染みと接触。それ以来私は彼らの隣で話を聞き、叱咤激励し、時に笑って今までやってきた。


「今年こそ、勝つから」

「………うん、分かってるよ」


徹くんは私に全幅の信頼を寄せ、彼の壁の内側に入れてくれた。乙女さんも頑張っているようだが、どうにも徹くんのガードは固いらしい。小学生の時に近所のお姉さんで初恋を散らせ、中学の頃には女子関係でとんでもない目に合っているからだろうか。主にとんでもない目に合ったのは私だけど。時代錯誤も良いところだと彼女たちには教えてあげたかったが、徹くんの鉄壁によりそれは叶っていない。

まぁそんなのは良い。今回私がこんなにも面倒な説明をしている理由を話そう。

徹くんに惚れてしまいました。

何てこった!!息子に恋したってことだ!!気付いたときは荒れに荒れて、それも今ではいい思い出ってそうじゃなくて。それもこれも乙女さんが私の世界に入りたいとか言い出すから、私の子たちを守るために来てしまったのが始まりで。悪いのは全部乙女さんだ。間違えてお父様のお気に入りを他の種族と掛け合わせてしまった私は、他意の無いウッカリだったので無罪である。
それで、惚れたからにはもう婿に迎えるしかないと思う――神様は一途か浮気性かに分けれるけど私は一途だ――のだが、私が世界の時間を巻き戻す前。純粋に子として、一番の愛を注いでいた徹くんには幸せな家庭を築いてもらいたいと思っていた。だから運命に、徹くんの為に産まれさせた女の子と恋に落ちて云々というものを組み込んでしまっている。それだけは確定事項として鍵まで付けてしまった。とってもとってもマズイ。その運命を無かったことにするには人間的時間感覚で20年くらい掛かる。天界に居たときは世界を一時停止していたが、今は無理なんだから絶望するしかない。絶望した。

まぁ、神様なんで本気出して徹くんに惚れて頂ければどうにかなりそうな気もする。信じて頑張るわ。


「徹くん」

「ん?」

「大丈夫。勝てるよ」


及川徹は天才ではない。それを知って、悔しがって、努力して努力して努力して。今じゃ流行らねぇよって言われるようなスポーツ漫画みたいに、外聞なんか気にしないでがむしゃらに努力した。そんな君がいじらしくて愛おしい。
だから私は1度だけ勝利をあげよう。たぶん君は怒るだろうから、少し背中を押すことしかしないけど。私は断言する。まだ、貴方は天才に負ける時ではない。
勝ったときは喜んで、負けたときは無様に泣けば良い。私は子どもに優しいんだ。受け止めよう、誰よりも君を愛そう。自分で設定した運命に反旗を翻して。運命を覆す、真実の愛とやらを探してみよう。なに、まだ時間はあるんだ。だから、まだ君は私の子どもで居てもいい。それでもいつか、婿に来てもらうけど。

こんにちは、この世界の創造神です。
貴方に惚れてしまいました。



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