始まりのファンファーレ
朝のST
猪崎はどうなっているんだろうか
私は親友のことが心配でかなり挙動不審になっていた
「…どうしたの?麗」
『精市くん……』
私が情けない声で返事をしたのは幸村精市君。あの男子テニス部の部長さん
そして私の近所のお兄ちゃん。猪崎にはまだ言ってないけど
同い年なんだけどね、昔からお世話になってるんだ
だから気が抜けてると 精市お兄ちゃん なんて呼んでしまう
そんな精市君は私と一緒のクラスで隣の席に座っている
うぅ…学校でもお世話になってます。忘れ物とか課題とか当てられたときとか、その他諸々
ちなみに撫子さんにデレデレしてない一人でもある
撫子さんより私のが可愛がられてる自信あるしね!!
ビバ!お兄ちゃん!!
『猪崎のクラスに転入生が来るんだって』
「猪崎…あぁ、仁王と丸井のクラスだね?」
『うん……なんか、ぶりっ子って噂なんだよね。猪崎、顔も良いから標的にされてないかなって』
「フフ……仁王と丸井より猪崎の心配なんだ?」
『だってあの二人は私のこと睨むんだもん。猪崎の方が私を大切にしてくれる』
「……まぁ、仕方ない…か」
精市君は少し悲しそうに微笑んだ
本当は仁王と丸井を心配して欲しいってことくらい、私にだって分かってる
でも……ねぇ
あれは無理だよ
私と撫子さんが話したりするたびに、痛いほどの視線をくれるし。地味な嫌がらせしてくるし
それに精市君には悪いけど、部活仲間が親友に勝てるわけないんだって
《〜〜〜♪》
そこで鳴ったケータイ
まだどこもSTのはずなのに……
不思議に思いながら新着メールを確かめると、猪崎からのメールだった
――――――――――――
助けて!!!
ST終わったらすぐクラスに来て
――――――――――――
『………』
「猪崎から?」
『うん……標的になったみたい』
何となく嫌な予感はしていたけど、この予感は当たってほしくなかった
精市君は私の携帯を横から覗き込み、私の返事を聞いて何か考え出した
何考えてるんだろ
まぁ、私には分からないことだろうから聞かないけどさ
あぁ……猪崎、大丈夫かな
私で助けられるなら良いんだけど
後で猪崎からの着信音とか変えておこう
なんかその方が良い気がしてきた