ゲリラ朝練
「おっはよう麗!」
重みを感じて目を覚ませば、目の前には満面の笑みの精市君。
あ、ゲリラ朝練か。
もそもそ起き上がって時間を確認すると、5時前だった。
……………え?
「5:30から朝練だからね。他の部員も起こしてから来るように」
『……はい』
それ、なんて無茶振り。
言わないけどね。心の中の呟きですよ。
低血圧な私が皆を起こすなんて無理な話よねー。でも頑張る。
精市君の役に立ちたいから。
でも無理な事は無理だった。
原因は“ちょっとだけ…" なんて思って布団に戻ったから。
どう頑張っても布団から出れない。その前に起き上がれない。またそれ以前に目が開かない。
……どうしようか。
『ひおー、いる?』
「居るよ」
居たらいいけど居ないよなー、とか思いながら氷皇を呼んだら、まさかの氷皇さんがいらっしゃった。
『え…なんで』
「麗の補佐役だからさ、手伝えって幸村に言われた」
『ふーん。なるほど』
手を伸ばして“起こして"と催促する。
氷皇は文句も言わずに起こしてくれた。
それからは隙あらば寝ようとする私を起こしてくれたり。
眠気覚ましにブラックコーヒーを飲ませたり(これは無理矢理飲まされた…)。
えぇ、お陰でバッチリ目覚めましたけど。
ついでに、撫子さんは私達が騒いでも起きないという図太さを発揮してくれた事をここに記しておこうと思います。
*** ***
どうにかこうにか放送室的なとこに着いたけど、如何せん使い方が分からない。
二人で使い方の書かれた紙と睨めっこしながら頑張ったけど、私は理解出来なかったから氷皇に全部やってもらった。
どんだけ氷皇に頼ってんだよって話だよね。
後で全力でお礼をしてみようと思った。
「多分、これで…」
氷皇がスイッチを入れてマイクを軽く叩く。
ボンボン、というような篭った音が開けたドアの向こうから聞こえた。
流石氷皇。今度DVDの使い方も教えてもらおう。
『皆さんおはようございまーす!!!平マネの佐久間です。5:30から朝練があります。至急支度をして集合しろ、と部長からの御達示ですので急いで下さいねー!!』
それだけ言って放送を切り、部屋に一旦戻る。
小さなショルダーバッグに必要な物を詰め込み、撫子さんをたたき起こしてから平部員を起こすために部屋から出た。
端から部屋を回るが、基本的に皆さっきの放送で起きたらしい。それでも起きてない人は私と氷皇で無理矢理起こした。
レギュラーは言わずもがな起きてるだろうし、最悪マネージャー二人が起こしてくれるだろう。
練習…、か。私も仕事あるんだよね。
ため息を吐くも重たい気持ちは変わらない。
眠い。眠いよ。
9時に寝たけど眠いよ。
……平の仕事は撫子さんと氷皇に任せちゃおうかな。