“傍観者"
「おはよう麗」
『おはよう精市君』
「ふふ、凄い荷物だね」
『精市君が少ないんだよ』
「そうかな?」
『そうなの』
in私の家の玄関
でのお話です
今日は朝練がないからいつもよりゆっくりできる
だから今日の私はいつもとは少し違ったりします
「あれ?今日は髪の毛いつもと違うんだね」
『うん、お姉ちゃんにやってもらったんだー。どう?』
いつもはそのまま下ろしているだけの髪の毛をちょっとお姉ちゃんにいじってもらったのです!!
アイロンで巻いて、ポニーテールみたいな感じです。……うん?たぶん、そうだった…ハズ
こういうのよく分かんないからなー
メイクしてる人とかスゴイと思うよ
ついでにこの前氷皇からもらったシュシュをつけてます
「可愛いよ」
『ありがと!』
「それじゃあ行こうか」
『うん!!』
二人で並んで一緒に登校
いつもより見られてる感じがする
嫌な視線じゃなくて、くすぐったい感じの視線なんだけどね
*** ***
『あ、』
「忘れ物?」
『違くて、ほら』
私が指差す先には仁王と山田さん
仁王は精市君と同じくちっちゃい鞄といつものテニスバッグだった
えー、男の子って皆荷物少ないのかな?
ちょっと羨ましいな。だって荷物重いんだもん
山田さんは…あ、荷物大きい
うん、そんなもんだよね
『二人とも凄いくっついてるねー』
「うん。恋人みたいに見えるね」
どうしよっかー
そう言い合いながら佇む私達
私達も恋人に見えるのは知ってるから
知らない人から見れば恋人に見えるなんてツッコミは求めてないんで
『おぉお……仁王が目に見えてグッタリしてる』
「…麗、助けてあげてくれる?目が合っちゃった。俺は後から行くから」
『良いよ。言われなくとも助けたしね』
いってらっしゃい、と手を振る精市君に私も手を振り返す
ぐったりしている仁王に少し笑いそうになりながらも傍に駆け寄った
『おはよ、仁王。山田さんもおはよ』
「…おはようさん」
「おはよう佐久間さん」
仁王がチラチラとこちらを見て助けを求めてくるから、私は仁王の腕に自分の腕を絡ませた
それに仁王は驚き、山田さんはキッと睨んでくる
駄目だよ山田さん
あなたは“テニス部員に興味が無い"女の子なんだから
マネージャーをするのも“仁王に頼まれて仕方なく"なんだよ?
ただの友達が女の子に腕を組まれてもどうも思わないでしょ?
だからあなたは何も思っちゃだめなんだよ
貴女は…
“傍観者"
なんでしょう?