スパイ
『……お疲れ様です』
私の目の前には疲れきった様子の仁王
先程の授業中にストーカーさんと接触するというミッションを遂行していたんだ
お疲れ様、と声を掛けることしかできなかった
「あいつ…めんどくさい」
『あ…あはは』
ここまで げっそり って言葉が似合う状態の人を見たのは初めてだ
「お疲れ様、仁王」
『あ、精市君』
精市君は私を後ろから抱きしめた
仁王の顔色がまた悪くなった気がするんだけど
「そういえば、なんでお前さんらは仲良いんじゃ?」
「『幼なじみだから』」
「っ!?」
『幼なじみって言っても兄妹みたいだけどねー』
「麗はどっか抜けてるから目が離せないんだよ」
『ごめん?』
「ふふ…気にしないで。それに麗みたいな妹だったら大歓迎だよ」
『お兄ちゃーん!』
キャピキャピと女子高生よろしく騒ぐ私と精市君
仁王は相変わらず顔色が悪い
今までの私への態度の仕返しが、精市君によって行われることになるから仕方ないけどね
ま、仕返しは抑え目にするように頼んどいてあげるけど
「さ、仁王。次もサボろうか。ミッションの結果を聞かせてね」
『私も聞くー』
*** ***
またまた氷皇の親友パワーを使って図書室へ
仁王はポカンとした表情になっていた
そりゃそうだ
だって図書室の一角は私と氷皇の物で溢れかえっているし、なかなかに快適なのだ
まるで秘密基地。用務員室並に快適だと思う
テレビもパソコンもあるし
お菓子も飲み物もある
冷蔵庫も電気ポットも電子レンジまである
ちょっとした家だ
精市君と仁王に紅茶とお菓子を渡したら、また仁王の顔が面白いことになった
慣れてくれとしか言えないなぁ
数分経つと仁王も慣れたようだった
「これからサボりに使っても良いか?」って聞かれるくらいには気に入ったらしい
答えは勿論NOだったけどね
私も居るときじゃないと入れてあげないよー
意訳は『サボりに誘え』だ
だって仁王と仲良くなりたい
部活で仲のいい人って精市君しかいないんだよ!!?さすがにそれはマズイ
仁王と仲良くなるのは私にとって急務だったりするのだ
「仁王、報告よろしく」
「!!あぁ…そうじゃったな」
仁王はちびちび飲んでいた紅茶(猫舌なのかな?)を置くと、真剣な顔つきになった
「それじゃあ報告するぜよ。しっかり聞きんしゃい。あいつは――――」