親友は異世界人! | ナノ
彼の歪み



『消毒液に、テーピング用のテープに…――』


目の前でガコガコと商品をカートに入れていく麗
麗の周りには、各自の買い物を終えた氷帝のレギュラーがいて、少しちょっかいを掛けたり談笑している

麗はマネージャーなんてやる前は嫌だ嫌だと五月蝿かったのに、やりだしてからは楽しんでいるようだった
嫌だと言っていた手前、素直にそれを口にすることはないけれど

それにしても…
本当に麗は貧乏くじ引きすぎだと思う
撫子姫歌の親友に、嫉妬ばかり向けられるマネージャー
マネージャーの方はファンクラブに撫子姫歌に辟易してる場面や、撫子姫歌について愚痴を言っている場面。レギュラーから向けられる嫉妬に当てられる場面などを目撃されたからあんま問題ないけど
簡単に言えば、ファンクラブに同情されたから
それからファンクラブと友好関係を築き上げる麗は凄いと思ったけど、情けないよな

というか…ファンクラブとか有り得ないよな
マンガじゃあるまいし……って違うか。あって当然だよな、この世界なら


『あ……』

「アーン?どうした、佐久間」

『これ、精市お兄ちゃんの使ってるグリップテープ…無くなりそうだって言ってたなぁって』

「っ!??」

『ん?どしたの、氷皇』

「いや…なんでもない」

「それくらい俺様が奢ってやる」

「スッゲェー!!跡部太っ腹!!!」


値段を見て唸る麗。どうやら自腹で買うか悩んでいるようだ
そんな麗に、俺の隣にいたジローが駆け寄る。なんか騒いでるけど話してる内容なんか聞こえない……

麗は【精市お兄ちゃん】って言ったよ、な?
精市なんて珍しい名前はテニス部の幸村くらいしか思い当たらない
そもそも麗とはただのクラスメイトって関わりしかないと思ってたのに
麗が部活以外で個人的に関わってるのは朝に話す柳だけじゃないのかよ…クソッ
出来るだけ、部活以外では関わらせないようにしてたのに…

あいつに、知られなきゃ…気に入られなきゃ良いんだけど

もし選ばれたりしたら…

……っ!!俺は麗を巻き込みたくないんだ
巻き込みたくて仲良くなった訳じゃない

ただ、俺を…
猪崎氷皇って一人の人間を認めてくれる人が欲しくて…
それで、麗に縋って……



ヒロインってのは、自然と人を寄せつける奴なんだ



いつか言われた言葉が脳裏に過ぎった
うるせぇよ……お前は黙ってろ

麗はファンクラブと友好関係を築いた
俺に依存してるジローあっという間に依存させた
初対面の氷帝の奴らとも仲良くなった
多分他にも俺の知らない所で誰かと関わって、誰かを虜にしてる

嫌だ…嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!

絶対に…離さない
絶対に、絶対にあいつには差し出さない

あいつは、麗は……俺が守る
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