今更気付いた
『おっきいね』
「そうだな」
『……跡部グループだって』
「成る程な」
『知ってんの?』
「知り合いの知り合い」
『猪ざ……氷皇って交友関係広いよね』
「……特典だよ」
『特典……?』
「気にすんな」
でっかいビルを二人で見上げてテンポ良く会話をしていく
特典って言ったときの氷皇の顔は、とても複雑な表情だった
跡部ねー。調べてみるかな
氷皇の交友関係もちょっと分かるかもしれないし
『買い物、行こう?』
「おー。荷物、重くないなら持ってやるよ」
『思いときこそ持ってくださーい』
「やだねー」
すたこらと走って行く氷皇を追いかけながら、二人して笑った
何これ、青春じゃん?
そんなことを思っていたら立ち止まった氷皇にぶつかった
『痛い……急に立ち止まらないでよ』
「いや…ちょっとな」
氷皇の見る先にはフロア説明
『は……?』
このスポーツショップは2フロアにわたってテニス用具が揃えられていた
氷皇によれば跡部家の御曹子がテニスをやっていて、その御曹子の為に作ったと言っても過言ではないのが、このスポーツショップらしい
なーる
テニスやってんのね
テニス部入ってんのかな
強豪校だったらどうしよう
道具良いの揃えられるなんて羨まし……
……って何考えてんだろ
「どした?」
『へ?』
「ここ、シワ寄ってる」
氷皇が指で指したのは私の眉間だった
シワを伸ばすようにさすりながら、氷皇に何でもないと答える
氷皇は ふーん と言うと、テニス用具のフロアに行くために歩きだした
多分、なんて思ってたかバレてるんだろうな
―――私、予想外にもテニスが好きになってるみたいだ