面倒事センサーが反応するんです
『マジないわ』
やっぱりあの女の子はマネになった
名前は……なんだっけ
「初めましてっ!!美波アイルっていいます!!マネージャーは初めてなんで迷惑かけるかもしれませんが、一生懸命やるんでよろしくお願いしまぁす!」
あ、そうだ。美波アイルだ
カタカナの名前の美波さんだ
イタタタターな感じだよね
それにしても、よく取り繕ったなぁ
自己紹介だけ見ると、めっちゃ元気があるいい子ちゃんじゃん
なーんか、皆骨抜きにされてるし
あーあ、若干精市君もじゃん。嫌だなぁ……
そんなことを思いながら、私は一人マネ室へと入って準備を始めた
あ……救急箱の中身が足りなくなってるからこれを補充して
ついでに他にも買うものあったから買いに行かないと
美波さんの相手は撫子さんに任せよ
美波さんに関わったら良いこと無いだろうし
あ、そういえば私がいつマネになったか言ってなかったよね
撫子さんに告白された次の日さ
精市君からも頼まれたらやらない訳にはいかないでしょう?
私はこれくらいしか恩返しができないんだから
「それじゃあアイル、マネの仕事は姫歌か麗に聞いてね」
「はーい!!了解ですっ。精市、皆、部活頑張ってねぇー」
「アイルも姫歌も俺の天才的プレーを見とけよなッ!!」
「アイル先輩、姫歌先輩!俺のプレーも見てくださいねー!!」
「うん、分かったぁ!!皆応援してるよぉー!」
「ブンちゃんも赤也君も皆も頑張ってね!!」
マネ室から出て来て最初に聞いた会話がこれってどうなのさ
おーおー、皆デレデレしちゃってさぁ
正直キモいっつーの
『撫子さん、美波さん。少し良いかな?』
「どしたの麗ちゃん。あと、姫歌って呼んでよ!!」
『ごめんごめん姫歌ちゃん。えーっと……マネのことだけどさ、私はこれから平の子達の面倒見るね。レギュラーに三人って多いから。だから美波さんのことは、姫歌ちゃんお願いね』
「そっか…麗ちゃんと離れるのは悲しいけど……うん!!分かった」
「私も分かったぁ」
『私は救急箱の足りない中身とか買ってくるよ。ついでにマネの事も幸村君に言っておくね』
「いってらっしゃーい」
二人がマネ室に入っていくのを見送って、ため息一つ
これで面倒事とは離れられたかな
コートに近づくにつれ、テニスボールを打つインパクト音が聞こえてくる
練習が始まってすぐに声を掛けるのは気が引けるけど…仕方ないよね
ガシャン!!とボールが私のすぐ近くのフェンスに激突した
ちらりと横目に見れば…柳生君だった
どこが紳士なんだか、はなはだ疑問である
鼻で笑って終わりにしてあげた
私優しーい!!なんてね
私はフェンスの近くにあるベンチに座っている精市君を見つけると、そっと声をかけた
『精市君、ちょっと良い?』
「…麗?うん、良いよ」
精市君はそう言うと立ち上がり、コートの入り口まで歩いて行く
慌てそのままで良いと伝えたけど、精市君は頑なに譲ろうとしない
あぁ……気を使わせてすみません
「どうしたの?」
『まず、救急箱の中身が足りなかったから買いに行くのを伝えに来たの』
「えっ!!もう無くなってた!?」
『うん。あとね、私はこれから平のマネージメントをするよ』
「……なんで?」
『レギュラーに三人って多いからさ。それに、皆は私よりも撫子さ…姫歌ちゃんと美波さんのが良いみたいだから丁度良いでしょ?』
「…………分かった」
『うん。それだけだから。それじゃあ行ってくるね。精市君は部活頑張って』
「いってらっしゃい、気をつけてね。あと、ありがとう」
…なんか……精市君、不機嫌だった?