SSS | ナノ
2020/01/28
気性の激しい猫
 俺の彼女は猫みたいだ。
 気紛れというか、懐かないというか。いや、懐いてはいるんだろうけど。ツンツンしている日もあったり、ベタベタしてくる日もあったり。女心は秋の空……とはよく言ったのもので、彼女もきっと気紛れなんだろう。

 初対面の人間や気に入らない人間には容赦なく爪を立てるし、何なら俺だってそうされたことがある。お互いよく知りもしないのに、俺のことを嫌い嫌いと突っぱねる彼女を見て、あの日の俺はどう思ったんだったか。もう、忘れてしまった。

 誰にも彼にも引っ掻き傷を残す彼女。
 そのくせ、俺の前ではその鋭い爪を引っ込めるのだから、たまらなく愛しい。
 ねぇ、昔みたいに、引っ掻いたっていいんだよ。噛み付いたって構わない。その傷痕も噛み痕も、俺にとっては可愛い子猫の愛情表現でしかないんだから。
 俺はそう思っているけれど、彼女は俺に爪を立てたくないと言う。傷をつけたくないのだと言う。時折噛み付かれても、甘噛みで済むんだから、だいぶ愛されているんだろうなぁ。

 気性が荒くて、一人が好きなくせに寂しがりや。アンビバレンスで不安定な、面倒くさい俺の愛しい愛しい恋人。
 そんなところが可愛いのに、俺に嫌われたくないっていい子の顔を取り繕って、繕い切れなくて、結局どこかでボロが出る。こんなはずじゃないんだって泣く彼女に、いつもの人嫌いの猫のような面影なんかこれっぽっちもなくって。

 ああ、もう、そういうとこがたまんないんだよねぇ。
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