僕と君のはなし | ナノ
 1限が始まるギリギリに教室に滑り込んだ俺は、何日か前に割り当てられた席にドカっと腰かけた。転校初日は、所謂転校生ということで漫画にあるような好奇の目に晒されたわけだけど、今ではすっかり皆が皆、興味をなくしたようで静かなもんである。

 俺も俺で、初対面の人と喋るのが苦手ということも災いして、なんというか…まあぼっち。仲良さそうに喋ってるクラスメイトをぶすっとした顔で眺める。
 いや、別にうらやましくねえよ何言ってんの。

 ちなみに言えば、俺が不機嫌な理由はそれだけじゃない。原因はこの学校と、――俺の左耳にある。

 転校してきたこの学校、なんと男子校なんだよね今更だけど。もっと言うと、俺は入学直前まで男子校に入れられることを知らなかった。まあ…、任せっきりだった俺にも非はあるんだけど。あの人(母)、そういう重要なこと俺に一言も言わないんだもんな。騙された。こんなにも健全で育ちざかりの男子をこんな男ばっかんとこに放り込んで何を考えているのか。これで俺の“彼女を作って青春を謳歌する”という人生設計は断たれたわけで。

 『もし俺に彼女出来なくて将来結婚する相手もいなくて孫の顔見れなくても恨まないでね』と、皮肉たっぷりのメールを母さんに送り付けてやったら『あら、別に可愛い彼女じゃなくてもかっこいい彼氏作ればいいじゃない』と返ってきて、白目をむいたのはここだけの話。



「木崎、次当たるよ」
「…え」


 いつの間にか始まっていた数学の授業。横を見れば隣の席の男子生徒がこちらを向きながら前の黒板を指さしていた。慌てて前を見ればちょうど先生が「じゃあ次、前出て」と一言。


「ほら、木崎ー。お前だぞ」
「えっ、俺?」

 全く授業を聞いてなかった俺はどういう流れだったのかわからなくて、思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。クラスからは少しの苦笑が零れる。
 居た堪れなくなって、慌てて引っ張り出した数学の教科書。でも話聞いてなかったから全然わからない。


 指されることを知らせてくれた彼も、答えまでは教えてくれなかった。 /home

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