アラームの音で目を覚ます午前8時。
目を開けて広がるのは見慣れない天井。起き上がって周りを見回すもこれまた見慣れない部屋。
ここに来て1週間が経過した今現在。一向に落ち着かない日々を送る俺がいた。とりあえず鳴り響いているアラームを止めて、そのまま何となくベランダの方を見る。
今日もいい天気そうだなぁ。きっちり閉まっているカーテン越しからもわかる、外の明るさにげんなりする。だって俺の心情と真反対なんだもん。
再び鳴りだした携帯で、我に返る。時計をみれば時刻は8時10分。どうやらまた、座ったまま寝ていたらしい。これもいつものことである。
そろそろ準備しないとやばいな。
のそのそとベッドから這い出してクローゼットから制服を引っ張り出す。未だにネクタイをちゃんと結べないのだけど、いちいち人に聞くのも恥ずかしいし、かといってわざわざ調べるのも面倒くさい。別に誰が見ているわけでもないしいいや、と心なしかガタついているネクタイも気にしない脱力系な俺です。
コンコン
ちょうど制服を着替え終わったところで、控えめに部屋をノックする音が聞こえた。
「…はーい」
寝起きのためカッスカスの声で返事を返せば、これまた控えめにドアが開く。
「あ、ごめん。今日いつもより遅かったから、木崎起きてるかなって心配になってさ。」
「ああ、うん。さっき起きた。」
「おはよ。じゃあ俺そろそろ出るけど、木崎ももう出るなら一緒にどう?」
そういってドアの隙間からこちらを窺う彼は、一週間前に同室になったばかりの浅倉くん。真面目なのか先生に頼まれたのか、転校してきた俺にこうして毎日控えめながら声をかけてくれる“いい人”である。
そんな彼の折角のお誘いに、あー…と、ガシガシと頭をかいた俺は考えたのち
「ごめん、まだ準備できてないし、先行ってて。」
「…そっか、わかった。」
あからさまに眉を下げて答えれば、彼は少し残念そうに扉を閉めた。それを見て、本当に少しだけ申し訳ない気持ちになりつつ、でもまあ彼が本当に残念に思っているかどうかわかんないしな、と捻くれたことを考える。
再び視線をクローゼットに戻して、備え付けられた鏡を覗き込む。不細工に曲がったネクタイを見て、やはり今度母親に教えてもらおうと、そう思うのだった。
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