小さい頃の俺にとって、自分の住んでいる家っていうものは絶対的な存在で。一生ここから離れることなんてないんだと勝手にそう思っていた。生まれた時からここが俺んちで、じいちゃんがいてばあちゃんがいて、母さんが飯を作って仕事終わった父さんが帰ってくる。これは変わんないんだと。
隣に住んでいた同い年の男の子に引っ越すんだと告げられた日も、俺は一生ここにいるから、いつでも戻ってこいと胸張って言ったことも。
この住み慣れた家を出て新しい土地に移り住むということが考えられなかった。
そんな頑固親父みたいな考えを持った俺が、人生で初めて転校というものを体験する羽目になったのは高校1年の春だった。
←|→
/home