ちなみに大樹さんと楓さんからの誕生日プレゼントは、万年筆だった。
「今回はね、大樹が選んだんだよ。」
楓さんの言葉に、思わず千秋と2人で顔を見合わせた。プレゼント選ぶの苦手だとか言って、いつもは楓さんが選んでる(らしい)のに。
「…来年は大学に進級するんだし、いいものは長く使えるだろ。」
「ふふっ、珍しいでしょ?でも大樹ったらこれにするって聞かなくてさ。どうやら結構前から決めてたみたいで――いたっ」
「うるせー!それ以上喋んな!バカ!」
ぶっきらぼうにそう言う大樹さんの顔が心なしか赤いのは、お酒のせいだったのか、それとも――。小突かれながらも、ふふっと笑う楓さんを見ていると何だか惚気を見せつけられている気分になる。このバカップルめ…。
「ありがとう。」
でも、それ以上に嬉しそうに笑う千秋を見て、俺も釣られて笑ってしまった。千秋が嬉しいのならそれでいいや。
そうして俺はといえば、千秋にひたすら謝罪しつつプレゼントをあげるという失態を晒すハメになった。千秋は嬉しそうに受け取ってくれたけど、もし自分が逆の立場だったら確実に拗ねてると想像出来るだけに後悔は大きい。というかこんなことなら一番初めに渡したかった!!両親の最高のプレゼントの後にこれはちょっと、ねぇ…?ああ、もうっ!戻れるならせめて前日まで戻りたい…っ
誕生日会という名の宴会が終わったのは午前0時を回った頃だ。完全に飲みすぎた大樹さんが熟睡して、そのままお開きになった。
×
みんなが寝静まったであろう午前1時。胸を締める後悔でなかなか寝付けなかった俺の意識は、部屋をノックする音で完全に覚醒した。返事を返せば、ドアが遠慮がちに開く。
「…千秋?」
予想していなかった人物の訪問に思わず目を見開く。こんな夜中にどうしたんだと、きょとんとしていたら当の本人が困ったように笑った。
「怖い夢、見ちゃって。一緒に寝てもいい?」
思わず吹き出した俺はきっと悪くない。