な ん で 忘 れ て た !!
俯きながら奇声をあげる俺に、わざとらしく大樹さんが溜息を溢す。
「何お前、忘れてたの?さいてー」
「酷っ!そこまで言う!?」
確かに!確かに忘れていたのは悪いと思っているけど、俺にだっていろいろと事情があるんだよ!…でも、確かに何十年も一緒に暮らしてきて誕生日忘れるとか普通に考えて酷い…よな。
「俺、なんかプレゼント探してくる…」
「えっ、今から?あと1時間くらいでご飯できるよ?」
困ったようにキッチンから顔を覗かせた楓さんに、すぐ戻るからと一言告げてヨロヨロと立ち上がった俺は、財布だけをポケットに突っ込んで部屋を出る。
忘れてたことは後で一応謝るとして、とりあえずプレゼントくらいは買って渡したい。というか毎年渡しているから、今年がないっていうのは自分的に許せない。
「そういや楓さんが電話してる千秋とすれ違ったって言ってたよな…」
入口で辺りを見回してみるが、千秋の姿はない。そういえば、買い物を頼んだって言ってたっけ。そこまで考えて自分は木崎に電話するんだったと、ふと思い出す。全く、どうして俺は一つのことに目を向けるともう一方を忘れてしまうんだろうか。
「とりあえずメールしとこ。」
確かに今俺がどれだけ心配しても、起こってしまった事は取り返しもつかないわけで。今日だけはそう割り切ってしまおうと、メールを送信して携帯をポケットに突っ込んだ。