楓さんの手作りご飯をたらふく食べたあと、再び定位置に腰を落ち着けた俺は、度々意識を飛ばしかけながらテレビの中で芸能人が話す声に耳を傾けていた。千秋が再び声をかけてきた気がしたけれど、ほぼ空返事な俺にダメだと判断したんだろう。そのまま台所で楓さんと共に、ご飯の後片付けを手伝っているらしい。
 そんな彼らをちらりと横目に盗み見る。楽しそうに話す楓さんににこやかに相槌を交わす千秋。あれじゃあもうどちらが保護者かわからない。

 ほどよい感じに微睡む思考に、身を任せながらいよいよ本格的に眠りに堕ちそうだったまさにその時、玄関の方から盛大に扉を開く音が家中に響いた。予期せぬ物音に眠気もなにもブッ飛んだ俺は、そのままソファから滑り落ちる。慌てて立ち上がったけど、どうやら目撃されていたらしい。

「み、みた?」
「…みてないみてない」

 そう言った千秋はわざとらしく視線を逸らす。絶対見てたじゃないか今!さりげなく哀れみの視線を送ってきた千秋相手に不毛な言い争いに転じようと身を乗り出した時――
 
 

「おいおいお出迎えはねーのか、ガキンチョども。」
「あ、大樹さん!」

 一応我が家の大黒柱である大樹さんが、スーパーで買ったであろう大量の荷物を両手に抱えて汗だくでご帰宅。

 買い忘れ買いに行っただけって言ってたのに、なんなのその量は…


「お前らが帰ってくるっていうからお菓子やらなんやら買ってきてやったんだよ。ありがたく思え」

 そう言って投げられるポテチの袋。うまくキャッチできなくて顔面に直撃。ちょうどギザギザのとこが目にあたった!痛い!
 口では勝てないから思いっきり大樹さんを睨みつけるも、涼しいカオで返された。畜生。そんな大樹さんを叱る楓さんに、その脇で黙々と食器を片付ける千秋。



 ――ハチャメチャな感じだけどまさにこれが俺たちのささやかな家族団欒なわけであります。

「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -