「相変わらずだなーもう」


 楓さんの姿を見て思わず吹き出す。どんなけ心配性だよあの人。今にもこちらに駆け出してきそうな楓さんに、少し早足で近づく。

「碧ー!千秋ー!」
「楓さんっ!」

 ニコニコと嬉しそうに綻ぶ楓さんの笑顔にたまらなくなって、胸に飛び込む。いい年してなにやってんだと言われそうだが、帰ったら必ず1回は楓さんとハグするのが俺のお決まりというかなんというか…要するにまだ俺も子供なのである。そんな俺に動揺することなくぎゅーっと抱きしめ返してくれる楓さんもまた、親バカなのかもしれない。

 そんな俺たちを見て毎回苦笑をこぼすのは千秋だ。


「ほら、二人とも。そういうのは部屋に入ってからにしようね。」

 そう言われてちょっと照れる。さすがに、恥ずかしかった、かな?

 

×



「改めてお帰り2人とも。お昼ご飯できてるよ〜」
「ただいま〜!」
「ただいま」


 一歩部屋に入ればご飯のいい匂いが鼻を擽る。リビングに続く廊下をくぐれば、綺麗に整頓が行き届いた我が家が目に入る。さすが楓さん、いい奥さんだよ全く。
 そういえばそんな奥さんの旦那がいない。あれ、今日は仕事休みだって言ってなかったっけ?

「大樹さんは?」
「ああ、実はさっき買い物に行った時に買い忘れがあって、気づいた時にはもうお昼の支度しちゃってたから、大樹に頼んだんだ。だからもうすぐ帰ってくるんじゃないかな」

 尋ねれば困ったように笑った楓さんが言葉を零す。なるほどなるほど。まあこのような楓さんのうっかりは今に始まったことじゃない。だから別段驚かない。千秋は「また?」と言ってちょっと笑ってたけど。



「は〜…落ちつく」

 小さい頃からお気に入りのソファに体を埋めてテレビをつける。別に見たいものがあるわけでもないんだけど、ここに座ると自然にテレビの電源をつけてしまう。そうしてそのまま寝てしまったりする俺を千秋が注意してきたりして…、思い返して顔がニヤける。昔はいつもそうだったのだ。


「こら、碧。そのまま寝るなよ」


 ほらね。

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