34.ピアニー
「あー!狭かった〜〜肩凝った〜」
伸びをしながら掃除用具入れから出てくる森広。
つーか怖っ!え、何。何で普通に出てきてんの?いやいやホラーだよ、お前いつからそこにいたんだよ!
「なんで掃除用具入れから出てきてんの・・・普通に怖いんだけど。」
「だって他に隠れるとこなかったんだもん」
別に隠れる必要ないんじゃないの、と一瞬思ったが、この状況でヘラヘラ笑っている彼を見る限り、どうやら俺の救世主ってわけではなさそうだ。
「お前もグルってわけか」
「ご名答〜。まあ俺自身、ほっしーには恨みないんだけどさ。」
ほら、俺って愉快犯じゃん?そう言って内野くんの横まで来た彼はガシっと内野君の肩を抱いてニヤリと笑った。
「あの記事書く手伝いしたのって、俺なんだよね〜」
まさにしてやったりな顔をしてこちらにピースサインを向ける森広を呆然と見る。どうしよう、一発殴りたい。
というか、肩を組まれた内野くんもすごく嫌そうな顔をしてるんだけど、ちょっとアンタらどういう関係?
そんな俺達の心情なんて気にすることなく、ニコニコした笑みを浮かべる森広は携帯を取り出して、そのまま話を続ける。
「――ちょうど行事の会議やらなんやらでバタバタしてた時期に、文化委員が出し忘れてた重要書類があってさ、俺が受け取ったんだけどそれの提出リミットがかなりギリギリだったんだよね。そういう書類にはかいちょーの判子が必要なんだけど、そんな日に限ってかいちょーいないし。で、うっちーに聞いたら新聞部に行ったって言うからさぁ――」
「かいちょーが新聞部?なんで?」
「俺に聞かないでよ。なんかよからぬスクープでも掴んだんじゃないの?」
「ナニソレおもしろそう」
「・・・バカじゃないの」
「――てな訳で、まあ新聞部にわざわざ足を運んでみたんだけど、かいちょーと新聞部の部長さんとかが何か話し合いしてるからさ。ついつい立ち聞きしちゃったんだよね、ごめんね」
「ちっとも悪いと思ってないくせに。」
「いーじゃん、そのお陰でうっちーも楽しめたでしょ」
小首を傾げてこちらに手を合わせる森広に、変わらず嫌そうな顔をして内野くんが言葉を発する。さらにそれを笑顔で宥める森広。
まあなんとなく、話がわかったようなわかっていないような…とにかく、あの記事は目の前のこの2人の仕業ということで間違いはなさそうだ。それにしても、千秋が新聞部に出向いた理由。恐らく阻止してくれようとしたんだろうな。
「あのー…、ちなみに、お2人はどういうご関係で?」
あまりにも2人の態度(まあ一方的に森広に対する内野くんの態度)がいつもと違うので思わず、と言った感じでおずおずと問いかければ、森広はますます笑みを深めてこちらを見た。コワイコワイ。
「良くぞ聞いてくれました!俺達実は――」
「腐れ縁ですよ。」
まだ何か言おうとしていた森広を遮って内野くんが口を開く。それを横から、「もう!うっちーってば照れ屋さんだなぁ」と森広がチャチャを入れる。
…あれ、俺って今呼び出されてる立場なんだよね?リンチされちゃうような雰囲気だったのに、目の前でじゃれる2人にだんだん自分の立場がよくわからなくなってきたよ俺。
「で、結局俺に何のようですかね」