24.フューシャ
いよいよ明日に体育祭を控え、各委員の生徒たちが、グラウンドにテントの設営や体育祭で使う小物を運んだりと、着々と準備が進められていた。
俺はといえば――
「あっち〜・・・」
何故か見学中。
「人手足りてんなら帰ってもいいんじゃないのコレさぁ・・・」
とりあえず俺も生徒会だから、手伝っているわけなのだけど。何故か準備している生徒が多すぎて俺が弾き出されてしまったこの状況。
一応、各委員だけでは大変なので、有志で集まった生徒たちが手伝ってくれているのだが、そのうちのほとんどが生徒会にちょっとでも近づこうという下心のある生徒らしい。森広が教えてくれた。そんな彼はといえば、いい獲物がいっぱい!と言わんばかりに、まさにそんな下級生たちを誘惑しているのが遠目からでも確認できる。
仕事しろお前ら。
木陰で休憩している俺の言えたことではないが、そもそも弾き出されてしまったのだから別にいいと思う。
夏はこれからだというのに徐々に日は長くなり、日差しは強く照りつけている。寒いのは我慢できるけど暑いのは無理、死にそうだ。
「星山先輩!」
「あ、内野くん」
暑さに項垂れていればふいに俺の名前を呼ぶ声。振り返ればそこには生徒会の1人である内野くんが、額の汗を拭いながらこちらにやってくるのが見えた。
「こんなところにいたんですね、担当の仕事終わったんですか?」
「いや、人手が多すぎてはみ出した」
「・・・ああなるほど」
俺がそう言うと内野くんは、グラウンドを眺めて嫌そうにため息をついた。あんまり喋ったことはないけれど、彼はいつも真面目に仕事をこなしているので、多分そういう下心が許せないのかもしれない。まあ俺も同感だが。
「――そんなことより、これ。明日の配置図です」
「あれ、配置図なら昨日もらったけど?」
「変更になったらしいですよ。副会長がさっき配ってて、先輩がどこにもいないから見つけたら渡しといてくれって。」
そう言って渡された配置図を眺める。そうして思わず声をあげそうになった。
配置の場所は何人かがガラッと変わっており、俺もその中の1人で場所は旧校舎付近。そして一緒に見回るのが――千秋。
「会長は忙しいから、当日連絡つかないかもって言ってましたよ。現地で合流するそうです。」
「そ、そっか。わざわざありがとう。」
「・・・いえ、じゃあ俺もう行きますね。」
軽くお礼を言えば内野くんはそのまま校舎の方に歩いて行った。俺は数分その場から動けず、ゆっくり腰を上げた頃には紙を握る手に力が入っていたようで少し皺が寄っていた。
また、バカなことを考えている自分がいて思わずパチンと頬を叩いた。