パチン、パチン
ホッチキスを止める音だけがやけに部屋に響く。あれから20分ほど経ったが一向に誰も帰ってこない。だいたい書類の量が多すぎる。これ1人でやれってどんなけ鬼だよ。
どうしよう、部活行かなきゃなんないのに。そろそろ大会が控えているし、練習には出たい。ふいに携帯を見れば着信履歴とメールが1件。やばい、どちらも渡辺からだ。
とりあえず、この書類を片して部活に行こう。悶々としながらも1人納得してひたすら手を動かす。
ガチャ―
漸くホッチキス以外の音が室内に響く。てっきり副会長が帰ってきたんだと思って文句を言おうと振り向いたまま、固まった。
「ち、あき」
「ああ、ご苦労様」
入ってきたのは千秋。しかも1人。
え、みんな一緒に会議だったんじゃないの?何で他のメンバーは帰ってこないんだよ
つまり現時点で部屋には俺と千秋の2人のみ。
う、うわぁあ〜・・・
どうしよう気まずい!
しかしそんな俺をよそに千秋は特に変わった様子もなく、自分の席に座って書類を眺めだした。
「「・・・・」」
それからもひたすらに沈黙。
ぎこちなくソファに座り直した俺はホッチキスを持った手を動かしながらも、またあのモヤモヤした思考を持て余していた。
今更だが、こんなに千秋を意識しているのは俺だけなんだろうな。
そう思うとまた悲しいやら苛々した気持ちやらがグルグルと胸を占める。これじゃあいつまで経っても堂々巡り。
この間からちょこちょこ邪魔が入ってまともに喋る機会がなかったし、いい機会じゃないか。
心につっかえてどうしようもないこの感情をなんとかしたくて、あまり深く考えずに思いっきりソファから立ち上がって千秋を振り返った。
「あ、えっと、千秋」
ぎこちなく、それでも意を決して声をかける。すると千秋はゆっくりとこちらを向いた。
久しぶりに交わる視線に何故かドキッとする。
そうして返された言葉に俺は地に落とされたように気分になる。
「・・・先輩、でしょ?星山くん」