17.利休鼠



 次の日、半ば寝不足状態の俺はほとんどの授業を聞き流していた。


 昨日、新崎先輩に晩御飯を奢ってもらってから、部活のことなどあれやこれやと話を聞いてもらい結局部屋に戻ったのは深夜0時すぎ。

 一応2人部屋だが、キーは1人ずつに与えられているので特に気にせず部屋に帰ったのだが、扉を開けて思わず叫びそうになった。


 真っ暗の中、ユキが仁王立ちで俺を待ち構えていたのだ。てっきりもう寝てるものだと思っていただけに正直かなり怖かった。





「遅い!何してたの?」

「何って、ご飯食べて帰るって言ったじゃん」

「こんな遅くまで?」

「…いろいろ話してたんだよ」

「誰と!」


―――――




 と、いう具合にユキに尋問されまくって結局開放されたのは深夜2時を回った頃だった。いったい何であそこまで根掘り葉掘り聞かれなくちゃならなかったのか、全く謎のまま。お陰で寝不足だ、まったく勘弁してくれ。




「…い、あおい」

「――え?あれ、何で渡辺がいんの?」

「もう放課後。部活行くと思って誘いに来た」



 放課後と告げられて思わず周りを見回す。
 教室には日直と数人の生徒しか残っていない。あれ、おかしいな、俺いつ昼飯食べたんだっけ。


「早く準備しろよ」

「―うん」


 渡辺に急かされて鞄を持って立ち上がったところで、生徒会の存在を思い出す。そういや放課後来るよう言われてて部活のこと言うの忘れてた。



「…ごめん、ナベ。先に部活行ってて」

「何?どこ行くの?」

「や、ちょっと生徒会室」

「…なんで?」


 怪訝な顔をして聞いてくる渡辺に理由は後で話す!と手短に答えて、教室を出る。正式なメンバーではないけれど、あんまり遅れて入りたくない。
 急いで階段を上がり生徒会室へ向かう。



「失礼しまーす…」

「遅い」


 コソっと扉を開ければ仁王立ちの宮下先輩が立ちはだかる。
うわぁ、デジャブ。


「放課後すぐ来るように言っただろ。」

「…すいません」



 俺にだって予定というものがあるんだと言ってやりたかったが、きっと2倍ぐらいの嫌味が返ってきそうなのでやめた。口は災いの元だ。
というか部屋を見回すと俺と副会長意外誰もいない。
 なのに俺だけ怒られるとか、不公平!


「みんなは今予算の話し合いで会議室だよ。」

「そーですか…」

「とりあえず、そこ座って。」


 思っていることをあっさり当てられ若干不服に思いながらも、昨日と同様のソファに促される。テーブルには資料の束が置かれていた。ちょっと待て、書類なんてそんな難しいこといきなり出来ないんですけど俺。



「大丈夫、資料を順番にホッチキスで止めてくれればそれでいいから。」

「はぁ…。って、そうだ!副会長、俺―」

 
 そんなことより、部活があるんですが!と言いかけた所で副会長の携帯が鳴る。



「―はい、…ああわかった。すぐ行く」



 生徒会の仕事だろうか、電話を切った彼は俺に一言、よろしく。と言ってそのまま部屋を出て行った。


 ちょっと、いきなり放置プレイはないだろ!

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