10.緑青色
会議の内容は6月に控える体育祭についてだった。
早めの時期にやるのは暑さ対策の一環らしい。今年はどんな種目をやるか皆で意見を出し合ったりして1回目は終了。次の会議は明後日だそうだ。
頼むからそれまでに仲直りしてくれよ。
「では、今日出た意見をクラスで発表し、話し合って下さい。ある程度纏めていただいて、次回の会議で発表していただきます。では解散。」
副会長の号令で、それぞれ教室を出て行く。
ふと千秋の方を見れば、次の打ち合わせだろうか。なにやら書類を見ながら副会長と話し合っている。
結局この会議中、1回も千秋はこちらを見なかった。はたしてそれが意図的なのか、ただ単に気付いていないだけなのか。俺にはわからない。
「新崎先輩からメール入ってた。この後、部活行くんだろ?」
「うん―・・・あ〜、ごめん俺今日休む」
配られた資料を片付け終わったらしい渡辺が声をかけてきたので思わず返事を返したが、先ほどの先輩との会話を思い出してすぐに了承の返事を取り下げた。
―昨日自主練の時に壁に穴開けた話はまた後で―
だって行ったら絶対しばかれるじゃん。それに俺は大輔先輩に用事がある。
喧嘩の理由を聞き出す。そしてあわよくば仲直りさせる!だってこれじゃあユキが可哀想だし。むしろ俺が可哀想だし・・・
とりあえず、それが俺への安息を取り戻す方法でもある。
うん決定。
若干部活を休む理由にこじつけている感は否めないが、この際そんな細かいことは気にしない。1人そう決意したところで渡辺が首を傾げてこちらを見る。
ふ、お前にはわかるまい。俺が今どんなに大変な状況かを!
「よし!」
「何、そのガッツポーズ」
「うるさいな今俺は決意したんだ色々。」
「どうでもいいけど、結局部活休むの?先延ばしにしたって、どうせ怒られるのは決定事項だぜ。」
そう言って出口に向かう渡辺の背中を何も言えず見つめる。くっ、ほんとコイツたまに核心をつくよな。ムカつく・・・
…そういやなんで壁に穴あいてるってバレたんだろう。なんとかわからないよーに埋めといたんだけどな。
部員は他にもいるのに、犯人俺だってバレてたし。
「何で俺だってバレたんだ・・・」
ボソリと呟けば、渡辺には聞こえていたようで彼はまたしても期待を裏切らない返答をよこした。
「だって俺が報告したもん。碧ちゃんが開けましたーって。」
「またお前かこの野郎!」
しれっと告発した渡辺をとりあえず1発殴った。