大馬鹿者


 好きだって言えたらどれだけ幸せなんだろう。叶わなくたっていい、ただ、伝えられたらそれでいい。でも俺も彼も男同士で、友達で、幼なじみで、認められる要素なんて、ほんのこれっぽっちもない。
「あっ、あ、あんっ」
 青い髪で、少しつり目で、気が強い女。最近抱くのはそんな女ばかりだ。彼に面影を重ねている。重なるわけなんてないのに重ね続けてる。
 わざとらしい喘ぎ声をあげるだけの情事が終わって、まだ俺の隣に居続けようとする女をあしらい、ベッドに一人で座る。ベッドサイドテーブルの引き出しを開けて、中から煙草とライターを出す。
 以前彼に吸うなと怒られた煙草。どうしても、セックスをした後は吸ってしまう。情事の匂いをかき消すためか、それとも罪悪感を紛らわすためかはわからない。
 事後はいつも虚しさだけが残る。気持ち良くなんて全然なくて、気持ち悪さしかないと言えばそうだった。でも、やめることができなかった。きっとこれからもできないだろう。
 馬鹿なんだと思う。


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