ああ今日はクリスマス。

皆と一緒にわいわいしたかったけど、「今日は空いてるよな?」と家康からメールが届いたから、行けなかった。

今日はわざわざメールしてまで聞くということは、クリスマスだからかもしれない。


外ではたまにカップルが通ったり、親子が手をつないで歩いてる。


携帯を開いて、今朝届いたメールを確認する。


………あと30分で来るか。


何も用意しなくていいって言われたから、何も買わなかったし、外にも出なかった。

去年喜ぶかなって思ってプレゼントを元親と一緒に買いに行ったらそりゃもうこっぴどく叱られたわけだ。

おかげで全治4ヶ月の腕の骨折。


友達と一緒にいるってことがあんまり好きじゃないんだって。

気持ちは喜んでもらったから良かったけど。


元親たちには内緒なことは最初に何回か怒られたとき、心身ともに記憶した。




今日は祝日だから、どこか以前殴られたところで痛いところはないかと確認する。

端からどっか痛かったら終わるまで身が持たない。



のどが渇いたし下へ行こうとしたら、階段を半分下りたところでドアがガチャガチャと音を立てる


(言ってた時間より20分早いなぁ)


目の前のドアの鍵が開けられるのを黙って見ていると、自然と足が一歩、二歩と後ろに階段を上がっていく。

二段目の鍵に手を付けたところで俺は体ごと振り返って全力で階段を駆け上がり、物置部屋に飛び込み、押入れへと情けなくも転がり入る。


下でドアが開け放たれる音がして手で口を覆い息を潜める。鼻水やらよだれやらで手を拭きたくなるが一寸でも動いてはならないんだ。


名前ーと陽気に俺の名前を呼ぶ声を聞くと目玉の奥が火に当てられた様に熱くなって体中から血の気が引く。

20分も早いから、服もまだ部屋着で靴下も履いてないから、ところどころ剥がれて爪がない爪先がすごく冷たい。



「はあ…名前、お前また隠れてるのか?そろそろ儂もかくれんぼは飽きてきたんだが」



正直俺も自分の行動に飽き飽きしてる。ごめん、ほら俺ここだよ、おかえり、って素直に出迎えればいいものの。

ああこれでまた余計痛いことされるんだな、俺って本当に馬鹿、何してるんだろうと無我夢中で涙で熱い顔を拭えば、となりの箱の中のものがごとんと落ちて引いてもなお引ききれてなかった血が凍りつく。

しまったとその場で固まるものの、そりゃもう遅いわけでして。




「名前!今日はこんなところにいたのか、いやあ物置の押入れは初めてだな…。ははっ、外出してしまったかと思った」



押入れの襖が勢いよく開けられ、骨が折れそうなくらいの勢いで腕をつかまれ立たされた。



「い…ぃ、家…康…」




外の寒さで冷えた指が俺の首を撫でる。


「寂しがるだろうと思って、早く帰ってきたんだが……やっぱりこんなところで泣いてたか」


すまない、とじっとりとした視線で俺を見て

優しく頭を撫でながらぐちゃぐちゃであろう俺の顔をゆっくり舐め回す。



くすぐったさと気持ち悪さに吐き気がするが、我慢するしかない。



「今日はケーキを買ったんだ。一緒に食べよう」


無理に口角を上に捻じ曲げ、軋む首を縦に振るとよかった、と微笑まれ、腰を抱かれながら階段まで行く


引っ付いてる家康のドクドクと早い鼓動が背中から伝わり、複雑な気持ちになる。


するとすっ、と彼が背から離れたから、どうしたんだろうと思い振り返ろうとしたら思い切り背中を蹴られ、浮遊感の次にぐるぐると視界が回り、体のありとあらゆる場所から鈍い音が聞こえる


足が折れたんだろう、すごく痛い。

その痛みに床の上で悶えているとまた立たされ、足が動かないからそのまま家康にしがみつく形になる。



「ははっ、可愛いや名前は。名前のその顔、儂は好きだぞ」


なんでお前の性癖のせいで俺がこんな目にあわないといけないんだ、って叫ぼうとしたところで突き放され、砕かれた足から脳髄まで一瞬にして激痛が走り声にならずじまい

足を抱えようにも「ちゃんと立てないとリビングいけないぞ?」と腕を掴まれてるから俺の足は宙ぶらりんのまんま


霞んだ視界ながらもとなりの家康を睨むと、あいつはただただ俺を愛しげにみつめるだけだった


サンタさん恐怖症

(プレゼントなんかもうもらえなくてもいいから)


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妙に長いなぁ…
家康の短編とかは暴力系が多くなりそう。

家康の中ではれっきとした純愛。

20111229


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