≪間もなく泥門デビルバッツ対賊学カメレオンズのキックオフです!≫ 「ったく、この糞ノロマ!ボサッとしてんじゃねぇ!」 首根っこを掴まれ、ベンチに引きずられていくかと思えばその場で妖一が止まる 「進がこんなとこに何の用だ。偵察の割にはカメラも何もねぇなぁ?」 進にまで喧嘩売るのか、と呆れたように笑う 「偵察じゃないな、俺は名前目当てで来たんだ」 受け入れ方によればそれは言おうとしてることとは違う意味で受け取られる可能性もあるということを全く知らなさそうなこの真面目な顔 「どういうことだ糞変態」 『なんでそこで俺が変態になるの。清ちゃんは俺の友達だから一緒に泥門の試合観ようかってなってさ。』 「そういうことだ」 俺と彼を交互に見渡すと、舌打ちだけしてベンチに戻った いい餅が焼けてる匂いがするのに俺は頬を緩めるだけ *** 試合が始まり、相手のキッカーがボールをわざと下手に蹴り、グランド中にボールが踊るように弾ける 相手が誰もボールを取れないのをいいことに、ボールがどこに行くかを予想して移動するが、その前にモン太がボールキャッチ 一気に的が押し寄せるのに、瀬那君へとパスを渡そうとするが、何かしらの理由で下投げしたボールが彼の後ろへと飛んで行った 「素人か」 『野球部だったんだって』 赤っ恥だのなんの嘆いてる彼にまもりちゃんが慰めの声をあげる それを聞いて明らかにデレデレとした表情を浮かばせ、はしゃぎだす また、俺もそれを見て彼に声をかける 『大丈夫だよモン太ー!カッコヨカッタヨー!ヒュー!』 わざと棒読みに言ってやると赤かった彼の頬から熱が引き、俺を憎たらしそうな目でみてくる *** 周りがギャーギャー言ってる間に時は過ぎ、賊学のキャプテンの頭に程良く血が昇ったようだ 「あいつは自分から行動するより相手を手駒にするのが得意だな」 『ねー。試合意外じゃそうでもないけど』 「ケッ、ハーフタイムでもイチャコラしてんじゃねぇよ」 『いい餅焼いてる蛭魔妖一〜』 何個出来上がったでしょう、とケラケラ笑ってやるとボトルを投げられたが、それを清十郎がなんともないようにキャッチする 「………」 「大丈夫か、名前」 妖一に一切視線を送らず、眼中にないとでもいうように俺へと振り返った 『あ、いや、うん。ありがとう』 「どうってことない」 いつもとは違う殺気が妖一の中で溜まっていくのを横目に見ながら冷や汗をかく 本当にこの仔は一体何を考えてるのかが分からない prevnext |