『もう勘弁してよ』 呆れた声を漏らしても嬉しくはないらしい 「テメーは黙ってろ。世話んなった身分のくせによ」 『っていうか実際無理矢理世話になっただけなんだけどね』 「世話は世話だ」 『それを世間では屁理屈という』 再度うるさいと話を切れば、阿含は首に舌を這わせながら笑う。 生々しい感覚に腕が震え始め、唇を噛み締める 「なんだよ、そんな顔もできんじゃねぇか」 『しないとは言ってないけどねぇ』 「余裕ぶってねぇで素直になったらどうよ」 『これでも素のつもり』 「嘘つけ」 耳に口を近づける彼は、わざとらしく声を低くして言う 密かにクツクツと俺と似た笑い方。 俺が笑うとこういう風に聞こえるのか?と疑問に思い始めると、阿含が乱暴かつ器用な手を動かす 右手は胸、左手は腰 慣れてるねぇ、と笑い飛ばしてやりたいところだ。 耳朶を甘く噛まれるといやらしい水音と吐息が頭に響く 同時に腰はやわやわと撫でられ、胸の突起をワイシャツの上から指の腹で転がされる 脊髄が痺れるような行為に多少の恐怖を感じ、俺は大丈夫だと自己暗示をかけるも気は少しずつ遠のくばかり 声を押し殺してるからなのか、だんだんと肩で息をするようになる 「声出せよ」 首を横に振り、嫌だと示す 「人の努力を水に流すなよな」 つまらなそうに腰に置いてある手をゆっくりと下にずらすと、さすがに危ないと察して震える手で彼の手首を捕える 『………もうすぐ降りないといけないよ』 「あ″…?」 彼も窓の外を見ると、車両があと少しで一周するのに気づく 「で?」 『アトラクションを任されてる仔に迷惑じゃん』 「恥ずかしいのか」 『恥ずかしくないあんたがすごいよ』 内心ホッとしながら阿含を退かし、車両が止まると先に外へ出てパーク員の女の子に礼をして先を歩く 黙々と阿含もついてくるが明らかに苛立ってる 大体なんで観覧車なんかでしようとするんだろう。 この子も案外物事考えてないかもしれない prevnext |